川の光日記

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夫です。チェス・イベントについて一言。

こんばんは。
またしてもお邪魔しております。夫です。日頃、家内のブログをご愛読くださいまして
どうも有難うございます。

家内が3月28日のチェス・イベントについてリポートしてくれましたので、
当事者の立場から多少補わせていただきます。

実は、前々日の26日に、チェルニン師は、世話役のジャック・ピノーさんともども
西日暮里の開成学園を訪れ、そこに集まった中学生・高校生相手に
レクチャーとエキジビション対局をやってくれました。わたしは開成の卒業生という縁で
その催しにも呼ばれ、対戦チームの指揮をとるというような役回りを
務めさせてもらいました(もちろんあっさり負けましたが)。
羽生善治先生がチェルニンさんを恵比寿のホテルから西日暮里まで連れてきてくれたのですが、
単なるエスコート役を気持ち良く引き受けて、子どもたちに混ざって気取らずに
にこにこしている羽生先生も、つくづく偉い方だと思いました。
久しぶりの母校訪問はわたしにはなかなか楽しく、帰り道、開成の中学と高校との間にある坂を
ゆっくりのぼって田端駅まで歩きながら、ある感慨がありました。が、それはまあ別の話です。
街並みはすっかり様変わりしても、当然ながら地形は変わらないのですね。

さて、28日の日仏学院での同時対局ですが、これもまた、
最初から予想されていたようにころりと負かされました。
以下、わたしのゲームの棋譜を辿りつつ、少々の説明を加えます。

Chernin, A.-Matsuura, H.
Grand Master Chernin's Simul, at Nichihutsu-Gakuin, Tokyo, 28/03/2012
1.c4 g6
こうした「多面指し」のエキジビションでは、一人で立ち向かう側が白を持つことになっています。
つまりGMチェルニンは先手番の白、わたしは後手番の黒ということになります。
従って、戦型の指定はこちらからはしにくく、とにかくGMの初手を待つほかありません。
初手c4はいわゆるイングリッシュ・オープニングで、わたしはやや安堵しました。というのも
GMはc4が好きなはずとピノーさんから聞いていて、実は事前にイングリッシュ・オープニングを
多少研究してきたからです。GMは隣席の慶応の小澤太郎教授にはd4を指し、
わたしの前に来て、多少ためらったうえでc4を指してきました。
彼の気紛れによる偶然ですが、わたしは内心しめしめと思ったのです。
2.Nc3 Nf6
3.e4 d6
4.d4 Bd7?
ところが、黒の4手目のこの4....Bd7?が、すでに疑問手なのでした!
後になってchessgames.comのデータベースを見てみると、白の4.d4まで進んで
同一局面になった棋譜が1309局載っていますが、黒の次の手が4....Bd7?となるのは
一局もありません。少なくともメインラインにはありません。ここは4....e5と突っ張るか、
4....Bg7とおとなしくキング側のビショップを上がっておくか、そのどちらかでした。
GMはわたしこの気弱な4....Bd7?を見て、キングズ・インディアン戦法のヴァリエーションの一つ、
「フォー・ポーン・アタック」で潰せると踏み、5.f4以下、嵩にかかって力ずくで攻めてきました。
これは当方のまったく不案内な定石です。
5.f4 Bg7
わざわざg7を空けた以上、ここにビショップを上がるしかありませんが、
この後、黒はすべて一手ずつ遅れる展開に。
6.e5 Bg4?
e5のポーンをとると最終的にはクイーンの交換になり、黒のキングで白のクイーンをとることになるので、
黒はキャスリングの権利を失います(4手目で4....e5をやれなかったのも同じ理由)。
そこでわたしは6....Bg4で強引にビショップをさばきに行ったのですが……。
7.Qb3 dxe5
この7.Qb3で、6....Bg4はあっさり空を切ることに。
chess01
8.dxe5 Nfd7
結局ナイトはすごすごと、無力な位置まで後退。
9.Be3 b6
9....b6はクイーンがb7地点に侵入するのをふせいだ手ですが、これも消極的な緩手でした。
こんなことをしている暇はなかったのです。ポーンを一個くらいくれてやっても構わなかったので、
むしろその代償として反撃の時間を稼ぐべきでした。
10.h3 Bf5
以下、ビショップが追われつづけて、惨めな後退を繰り返します。
11.Rd1 Nc6
白はクイーン側へキャスリングができない(黒のf5のビショップが利いている)ので、
強引にルークをd1に持ってきました。しかし、このピンの効果は、
その強引さのデメリットを償ってあまりあるものです。黒のナイトとクイーンは
縫い留められて硬直状態と化しました。とはいえ、こうした強攻の代償として、
白のキングサイドは極端に展開が遅れています(上の写真をご覧ください)。
その点を咎められればまだまだけっこう互角のはずだ、とわたしはこの時点では考えていました。
ところが、黒にはその方策を実行する余裕を与えてもらえません。
12.g4 Be6 
このビショップだけ無駄に4回も動かされる始末。
13.Nf3 Qc8
またしても1手のロスですが、d1のルークによるピンはどうしても
外しておく必要があるので、やむをえません。
14.Ng5 Nc5
15.Bxc5 bxc5
この交換でbファイルが開いたのは黒のメリットです。これでいつでもRb8で白のクイーンを
攻撃する権利を得ました。またナイトとビショップの交換は、ポイント的にも黒がやや得。
16.Nxe6 Qxe6
悪夢のような自軍のビショップを始末するのと引き換えに、クイーンがここに出られたわけで、
わたしは内心、ここではかなり持ち直したのではないかと思っていました。
しかし、白がキングズ・インディアンの形を決める次のBg2(キング側のビショップがここに
上がる戦法をキングズ・インディアンと呼びます)が、まさにこのもっとも効果的な瞬間に来ました。
17.Bg2 0-0?
ナイトでなければa8のルークがとられてしまいます。またしても、きわめて効果的なピン。
かつ、d1の白ルークがまるまる貫通しているのが恐ろしい。わたしはともかく
キャスリングによってa8のルークを守っておかざるをえない(それによってキングが
d1の白ルークから離れて安全にもなる)と考えたのですが、ここはむしろ17....g5で、
g6にクイーンの逃げ場所を作っておくべきだったかもしれません。というのも……。
18.Bd5 Rab8
愚かなことに、この18.Bd5がまったく見えていなかったのです!
GMが近づいてきてすぐ隣に来た瞬間に見えて、ああ、と頭を抱えましたが、もう遅い。
もはやクイーンの行き場所がありません。そこで、18....Rab8。
これは黒の最後の勝負手、というか、もはやこれしかありません。
19.Bxe6 Rxb3
20.axb3 fxe6
クイーン交換に続いて、ビショップとルークの交換になります。その戦力差でもはや、勝負あり。
とはいえ、fファイルがf9のルークのために開きました。ここでまだしも、
このルークがf4の白のポーンをとりつつ進出できさえすれば、
辛うじてバランスがとれていたかもしれません。しかし……。
21.0-0 Nd4
白はこの絶好のタイミングでキャスリング。自動的にf1のルークがf4のポーンを守ることになり、
黒のf9のルークは前進できません。ルークとビショップの戦力差に加えて、
ポジショナルな意味でも盤面上で白が黒を抑え込んでいます。
この後はもはや将棋で言うところの「形作り」でしかなく、実質上はもう白の勝ちが決定しています。
プロ同士の対戦ならここで黒は投了しているでしょう。
22.b4 cxb4
23.Rxd4 bxc3
24.bxc3 g5
役立たずのルークを始末して、キングを進出させて戦おうという最後の試み。
ここでルーク交換をせずに他に何か抵抗しようがあったか? なかったでしょうね……。
25.fxg5 Rxf1+
chess04
26.Kxf1 Bxe5
27.Rd8+ Kf7
28.Ra8 a5
29.Rxa5 Bxc3
黒のビショップがポーンをとる手が白のルークに当たります。
しかし、こんな小技はもはや何の役にも立ちません。
30.Rc5 Bd4
31.Rxc7 e5
chess05
32.Ke2 Ke6
白のキングまで戦列に参加してきました。黒のキングは何とかe6までは出ましたが、
白のポーンが絶妙な形で両翼に残っているので、これ以上は前進できません。
33.Kd3 Kd6
34.Rc8 Bf2
35.Ke4 e6
白のキングはついにe4まで来て、黒のポーンの前進を完全に封殺。
36.Rh8 Bh4
せめてあともう一個だけでもと思い、白のポーンをとりにいきますが、空しいだけ。
37.Rxh7 Bxg5
38.h4 1-0
このダブルポーンの前進はもはや阻めないので、黒の投了もやむなし。

終わってから、「けっこう良い勝負でしたね」などと心優しいピノーさんが慰めの言葉を
かけてくれましたが、少しチェスが強い方から見れば、まるっきり情けないゲームとしか
映らないことは重々承知しています。すでに4手目で間違えているわけで、
しかしまあ、ここを切り抜けたとしても、あっという間に潰されるという結果は
どっちみち変わらなかったことでしょう。GM畏るべし!

家内は「8番目に負けた」とか書いてくれましたが、強い人同士のゲームでは、
勝負の帰趨が双方にとってはっきりした瞬間にそこで終わりになります。
わたしはただ、未練がましく無駄に粘ってみただけです。
こうして、わたしの晴れ舞台の日は終わりました。まあ、わたしの知力はこの程度のものです。
この棋譜を一生の記念として、あとは静かな余生をおくることにします……。
しかし、本当に楽しい体験でした。不意に春めいたぽかぽか陽気になった、すばらしい快晴の一日でした。
声をかけてくださった羽生先生、
お膳立てしてくださったピノーさん(長らく絶版になっている『ジャック・ピノーのダイナミック
チェス入門』は愉楽に満ちた名著です。新版を出してくれる出版社がどこかないものでしょうか)、
そしてもちろん、わたしなどを相手にチェスを指してくださったアレクサンダー・チェルニン師──
皆さんに心からお礼を申し上げます。
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  1. 2012/03/30(金) 23:11:40|
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