川の光日記

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2011年動物本ベスト5 その③ 『雪の練習生』

2011年の動物本ベスト5続き。

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母親が育児放棄したために、ベルリン動物園で人口哺育されて有名になったシロクマのクヌート↑には、
以前から注目していた。
動物の赤ちゃんはなんでも可愛いが、なかでも大型哺乳類の子供は、
あどけない顔やしぐさと手足のごつさのアンバランスさがたまらない。
クヌートはこのルックスで世界を悩殺し、グッズは飛ぶように売れるわ映画は作られるわで、
動物園に莫大な利益をもたらしたらしい。

多和田葉子の『雪の練習生』は、そんなクヌートの祖母と、母親と、クヌート自身の物語。
つまりシロクマの三代記である。



祖母は作家。その娘トスカはサーカスの花形。孫のクヌートは動物園のスター。
冷戦時代のモスクワ、東ベルリン、さらにドイツ統一後の西ベルリンへと、舞台は徐々に西へ移っていく。
シロクマの年代記にヨーロッパの戦後史が重なり、時代ごとに人称も文体も微妙に変化する。

第二部の「死の接吻」は、前半が人間の一人称、後半がクマの一人称で書かれていて、
クマと人間がキスをする芸は、東西に分断されたベルリンのアレゴリーのようにも読める。
第三部では、商業主義に翻弄されるクヌートの分身として、マイケル・ジャクソンらしき人物
(作中では“ミヒャエル”と呼ばれる)まで登場する。

しかし、圧巻はやはり、クヌートの祖母が一人称で語る第一部だと思う。
サーカスで膝を傷めて管理職に移った「わたし」は、海外公演の準備や会議の合間に、自伝を書き始める。
文芸誌に掲載されたのを機に「わたし」は作家として認められ、モスクワから西ベルリンに亡命する。

作家とはいえシロクマなので、「わたし」は冷蔵庫のスモークサーモンを一度に全部食べてしまうし、
爪がじゃまで本のページがめくれないし、ネオナチの少年を平手打ちで軽々と撃退する自分の暴力性におののく。
友好的な人間たちとのやりとりもどこかちぐはぐで、世界は不条理に満ちている。
亡命先のホテルで孤独にペンを握りしめるこのシロクマ作家は、ドイツを拠点に日本語とドイツ語で書いている
作者自身なのだ。だから次々と繰り出される荒唐無稽なイメージに不思議なほどのリアリティがある。

ちなみにリアル・クヌートは、大人のクマになってからは見物人が減り、今年3月19日に水槽で死んでいるのを発見された。
解剖で脳に問題があったことが判明した、と動物園は発表したという。


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  1. 2011/12/27(火) 23:07:09|
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