川の光日記

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走る犬、走る人

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冬の公園をタミーが全速力で走る。

私と夫は目を潤ませ、両の拳を固く握りしめて、そのしなやかなランニングを見守る。

私は慢性の貧血で、走るとすぐに心臓がバクバクする哀しい体質。
夫はといえば、ゆっくりゆっくり歩くのが得意技で、自らを一種の“緩歩動物”に分類しているほどだ。
(緩歩動物に分類されるのは、厳密にいえばクマムシだけなのだが)

5年前、読売新聞の夕刊で『川の光』の最初のシリーズが始まったとき、
朝刊では沢木耕太郎さんが連載小説を執筆されることになっていた。
連載開始にあたって、PRのために沢木さんと夫のポスターを撮影することなったのだが、
その撮影現場に沢木さんがなんと「走って現れた」のが、いまでも私たちの間では伝説として語り継がれている。

沢木さんは当時、現在の夫くらいの年齢でいらしたはずだが、
「あ、流星だ!」「いや、沢木さんだ!」と叫びたくなるような颯爽とした走りで到着し、
息も切らさず、すぐさま撮影に入ったのだという。

以下、夫の談。
──撮影は、東京郊外のある小学校の校舎を借りて行なわれたわけ。
ところが、集合時刻を15分過ぎても沢木さんが現われないから、みんなちょっと心配になりはじめたんだよ。
そして、こんな会話が交わされた。
記者A「沢木さん、遅いな」
記者B「今きっと、駅から走ってくるところだよ。沢木さん、いつも走ってるから」
僕「そう言えば、沢木さん、空港で走る話を書いてたよね。
なぜか自分はいつも空港で走らなければいけない成り行きになる、空港で走っている男を見かけたら、
それは私だと思ってほしい、っていう…」
記者A「あっ、校門の方からこっちに向かって走ってくる人がいるぞ」
(僕たちは2階の教室の窓から校庭を見下ろしていたんだ)
記者B「俺、近眼でよく見えないんだけど、その人、走ってる?」
僕・記者A「走ってるよ」
記者B「走ってるなら、それは、絶対、沢木さんだ」
爽やかな笑みを浮かべて現われたのは、もちろん沢木さんだった。

私は現場に居合わせたわけではないのだが、作品のほとんどを読破している沢木ファンとして、
その精悍な走りが目に浮かぶように思った。

「僕らも体を鍛えないとな…」
「ほんとうにね…」
「『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のトム・クルーズも、いい体してたよね」
「もうすぐ50歳なのに、ビルにはよじ登るし全力疾走はするし」
「サバイバルの決め手は決断力と体力だよね」
「ランニングはアルツハイマー予防にも効果があるらしいしね」

映画ならここで「よし、あの木まで競争だ!」とどちらかが叫んでふたりは走り出し、
息を切らした人間たちの周りをタミーが楽しげに跳ね回るわけだが、
そんなことには決してならないのが現実というもの。

私たちはボールを持ち帰ったタミーの頭をゆるゆると撫で、
背中を丸めてクマムシも顔負けの緩やかな歩みで駐車場へと向かったのであった。

走れタミー! 私たちのぶんまで!

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  1. 2011/12/22(木) 23:08:19|
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  4. | コメント:0
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