川の光日記

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エドガー・ソーテル物語



↑今年も枯葉の衣を身にまとう(早い話が枯葉まみれになる)「コロッケの芸」を披露する気満々のタミー。

さて、読了してからかなり時間が経ってしまったけれど、
『エドガー・ソーテル物語』について書いてみようと思う。



舞台はアメリカ北部ウィスコンシン州の大自然のなか。
犬のブリーダーを生業にする両親のもとに誕生したエドガーは、
耳は聞こえるし聡明なのに、生まれつき口がきけない。
彼は独自に編み出した手話で両親や犬たちと意思疎通しながら、
ブリーダーの仕事を手伝い、牧歌的な少年時代を過ごす。
しかしある日突然、父親が倒れて亡き人となってから
エドガーの運命は大きな変転のときを迎える…

ストーリー紹介はこれくらいで止めたほうがいいような気がしてきた。
これは丁寧な文章でじっくり綴られていく長い長い物語であり、
近年には珍しいほど、長編の世界に没入して読む楽しみに満ちた作品なので、
予備知識は最低限でいいのではないだろうか。

読んでいくと途中で「もしかしたら?」と気がつく人も多いはずだが、
この小説はシェークスピアのある有名な悲劇を下敷きにしている。
そしてよく知られたヒロインの役を、一匹の犬が演じている。
しかしその悲劇のタイトルも、知らずに読み始めたほうがいいと思う。

つまり、面白いからぜひ読んでみてください! とくに犬好きの方は絶対!
とだけ言っておけばいいようなものなのだが、
せっかくなので、個人的にとくに感銘を受けたポイントをいくつか挙げてみる。

●とにかく犬の描写が最高。

基本的にこの小説では、犬は擬人化されない。
彼らのしぐさや態度が淡々と客観的に描写されていくだけなのだが、
それが常にシャープで的確で愛にあふれ、犬の魅力を余すことなく伝えている。
生まれたばかりの無邪気な仔犬たち、家族の一員として生きる名犬、
野生化した一匹狼のはぐれ犬、主人公の逃避行に寄り添う若犬たちなど、
さまざまな犬が生き生きと躍動して、犬好きの心をわしづかみにする。

●主人公も実は犬?疑惑。

主人公エドガーの「頭がよくて聴覚は正常、なのに口がきけない」
という設定は、どう考えても犬である。
その証拠に、彼の最初の記憶は、木の床に犬の爪がカツカツと当たる音であり、
揺りかごのカーテンをかきわけて顔を出した犬の笑みや、
顔をべろりと舐めたその舌の温かい感触なのだ。
エドガーは人間の少年ではなく究極の名犬のような存在で、
これは結局、聡明な犬が人間の愚かさと闘う物語なのではあるまいか。

●森への逃避行にわくわく。

父の死後、ある事情によってエドガーは3匹の犬を連れて家出し、森をさまよう。
この森には湖が点在し、その周辺はちょっとした別荘地になっている。
なんとなく今の自分の環境に似ていて、このパートはかなりわくわくしながら読んだ。
留守の別荘に忍び込んで食料を調達したり、木陰で犬と体をくっつけあって丸くなって眠ったり。
犬たちはたくましく亀の卵を掘り出したり、蛇をつかまえて食べたりもする。
そして、さらなる危機が訪れたときに彼らを助けてくれる、ある人物。
最初は犬に疎く関心もなかったこのキャラクターがだんだん犬好きになっていくくだりがたまらない。

アメリカではベストセラーになったこの本、ハリウッドで映画化の企画が進んでいるらしい。
どうせならスピルバーグに監督してもらえないものか、と密かに願う私だった。

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  1. 2013/11/09(土) 18:34:47|
  2. タミー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:10
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コメント

エドガーが成長して行く姿を想像しながら読みました。

こんばんは。IZUMIさん、感想ありがとうございます。エドガー=犬説、なるほどなと思いました。私は、そんなこと全然気がつかなくて、赤ちゃんから子ども、少年、そして青年へと成長するエドガーの姿を思い浮かべながら読んでいました。口がきけない設定でしたが、本なので、文字を追っていると、声が聞こえてきて、青年になったエドガーは、ちゃんと声変わりをしていました。犬たちの性格が、それぞれちゃんと描かれていた点にも感心しました。例えば、竜巻にあった時、飛び出して立ち向かった犬と命令どおりに傍にいる犬。あの時はどうなってしまうのかと本当にハラハラしました。私も、最後の方に向かうにつれて、益々ページのめくり方が早くなりました。森の中で出会ったあの方は、干渉し過ぎず、優しく見守っている姿勢が心地良かったです。そして、いよいよクライマックスへ・・・。いつ見つかるかとヒヤヒヤ。最後はお話ししませんが、驚きの最後が待っていました。読み終わった途端、魂が抜けたようになってしまいました。ここまで物語の世界観に没頭出来たのも久しぶりでした。IZUMIさん、よい作品をご紹介いただき、ありがとうございました。冬ごもりの節には、またお勧めの作品をご紹介ください!
追伸:私も菊乃さんやアロマポットさんのように、先生の寂し気なのに強がって見える後ろ姿に惹かれてファンになった一人です。奥様がいると分かった時には「あー、騙された~」(?)と思いましたが、今ではIZUMIさんの魅力にはまり、すっかりご夫妻のファンとなりました!
  1. 2013/11/09(土) 22:16:22 |
  2. URL |
  3. あき #xryAPOvs
  4. [ 編集 ]

読みました!

まだ、ボーっとしています。このところ、どこにいくのにも、一緒でした。まるで、お弁当箱みたいにぶ厚い本。読み終わって、表紙の絵を、特別なまなざし、愛しい切ない思いで、エドガー少年の後ろ姿を指でなぞらずにはいられません。私も、魂が抜けたようになってしまいました。IZUMIさんがおっしゃるように、エドガー=犬説。表紙のエドガー少年の隣のソーテル犬はまぎれもなくエドガーその人なのかもしれません。読み終えて、あの人の存在が、本当に嬉しくて、あの人の登場するところを、又読み返しました。シェイクスピアの悲劇は、ずーっと、昔、ロシア映画の白黒フィルムでインノケント・スモクトフスキーの主演で見たことがあるのを、思い出しました。画面も屋内だけで、暗い気持ちのまましばらく落ち込んだものです。でも、エドガーのこの物語は、森の中で、たくましく生き延びる主人公の姿に、ハラハラしながらも、自然の風景の中に、まるでドキュメンタリー映画を見ている様な、空気や空や水や草や木の中、犬たちの息や手触りの中で、私も、そこにいる様で、グングン引き込まれていきました。最後にみんなで、あの人のところを、目指すんですよね!私も、最後に向かうにつれて、ページをめくるのが、ドンドン早くなりました。あーあー、ついに終わってしまいました。IZUMIさん、本当に、ありがとうございます。登場する犬たち、アーモンディン、フォート、エセイ、バブー、ティンダーそして、エドガーそして、あの方、この世は、すてたもんではありませんね!映画化もすごく楽しみですね!スピルバーグ監督に、お願いのお手紙書いてみるっていうのどうでしょう・・・・・か!
  1. 2013/11/11(月) 00:40:29 |
  2. URL |
  3. アロマポット #3l8pHDnU
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犬の名作

あきさん、アロマポットさん、こんにちは。
コメント欄がミニ読書会にも利用できることがわかって嬉しいです。
この作者はソフトウエアの開発をしていた40半ばにふと思いたってこの小説を書き上げ、
これ一作で彗星のようにアメリカの読書界に登場して、
いきなりベストセラーになってしまったそうで、
そういうところも含めて「偉大なアメリカ小説」の系譜に連なる感じがしますね。

ここを見ていらっしゃる方で、犬が登場する名作を
ご存知の方がいたら、ぜひ教えて下さい!
  1. 2013/11/11(月) 15:52:16 |
  2. URL |
  3. IZUMI #-
  4. [ 編集 ]

狼のこと

ふと思い立って、こんなにもすごい世界を、作り上げてしまう人がいるなんて・・・・!しかも729ページです!読み終わったあとの、この切なさというか、まだ気持ちが渦を巻いている感じ・・・・。また、ゆっくり、好きなところを何度も、読み返したい本です。なんだか、狼の赤ちゃんの、エピソードや、フォートのことが
、気になって仕方ありません。以前、IZUMIさんが、紹介して下さった「狼の群れと暮らした男」今度、リクエスト出してきます。狼に、受け入れてもらえた人なんですよね!エドガーや、あの方のことも重ねてしまいます!今から、読むの、楽しみです!へへへ・・・です。
追伸  アキさんも、同期生なんですね!嬉しいです!なんか、ワクワクしますね!
  1. 2013/11/11(月) 22:54:46 |
  2. URL |
  3. アロマポット #3l8pHDnU
  4. [ 編集 ]

クールダウン

読み終えて何日も経つと高揚した気持ちもおさまり、妙に疑問がわいてくる。
・エドガーの喉の構造。解剖的には、やはり犬なのか?
・いつまでも、グレンとレスリングみたいにやっていた母親。
・クロードの兄に対する殺意の理由。
架空の物語とは言え、なんか気になるのよねぇ。
  1. 2013/11/12(火) 01:24:32 |
  2. URL |
  3. ビス丸のファン #-
  4. [ 編集 ]

犬笛

ずいぶん古い洋画です。何処か遠くへ行ってしまった犬を呼ぶために、少年が毎日犬笛を吹き続け、やがて犬が戻って来る話です。
洋画のタイトルはわかりません。約20年前、テレビで観て感動的でした。
  1. 2013/11/12(火) 01:39:50 |
  2. URL |
  3. ビス丸のファン #-
  4. [ 編集 ]

デューク

『エドガー・ソーテル物語』、購入して届いたのですが、ぶ厚さにびっくり!
みなさんの感想を読んでいると、読み始めたら止まらなくなりそうなので、
年末休みにゆっくり読むつもりです。

犬の小説と言われると、江國香織さんの「デューク」(「つめたいよるに」収録)を真っ先に思い浮かべてしまいますね。

最近では、犬ではないのですが、動物をモチーフにした小説集で、
小川洋子さんの「いつも彼らはどこかに」も、とってもよかったです。
装画が素敵でジャケ買いでした。

ビス丸のファンさんがお書きになっている「犬笛」で検索してみたら
全然ちがう日本の小説がヒットしたのですが、
これはこれでおもしろそうな…
  1. 2013/11/12(火) 12:40:00 |
  2. URL |
  3. inocco #BRwvxaDM
  4. [ 編集 ]

謎!

実は、私も、不思議に思うことがあります。なぜあの方の名前が「登場人物表」に書かれていないのか?ものすごく重要な登場人物だと思うのですが、作者は、もしかして、わざとはずしたのでしょうか?わざとだとしたら・・・なぜなのか・・・?今日も、まるで、へなちょこ探偵のように、ずーっと、推理していますが、わかりません・・・!
ビス丸さんが、おっしゃるように、クロードとヘンリーが入れ替わっていたらどんなによかったか・・・!と思ってしまいます・・・!この物語は、ヘンリーなしでは、絶対に成り立たないはずなのに・・・・!ヘンリーのフアンとしては、何か、秘密がありそうで、ふに落ちないのです・・・・!
  1. 2013/11/12(火) 22:40:49 |
  2. URL |
  3. アロマポット #3l8pHDnU
  4. [ 編集 ]

私も謎

私もまさにビス丸のファンさんと同じところが謎でした。
なぜあの男はエドガー母をずっと羽交い絞めにしている必要があったのか?
おそらく気を失ってしまっては目撃者になれないからなんでしょうが…
それからあの魔女っぽい食料品店の女主人も謎。

思うに、シェイクスピアを下敷きにするアイデア自体は成功していると思うのですが、
そのためにいくつか無理をした部分もあるのではにでしょうか。

しかし、全体としては非常にリーダブルで、読者を引っ張っていく力があるので、
読んでいる間は少々の欠点は気にならないのですね。

私も小川洋子さんの本、読みました。
特に最初の「帯同馬」の話が好きでした。
犬笛の映画はちょっと調べてみようと思います。
  1. 2013/11/13(水) 23:47:17 |
  2. URL |
  3. IZUMI #-
  4. [ 編集 ]

お嫁さんになりたかった(?)

犬の話、多和田葉子さんの「犬婿入り」が好きです。私は前に飼っていた猫のことが好きで、「生まれ変わったら嫁になりたい」と本気で(?)思っていたので・・・。地方の民話で、そういう動物婚(?)の話は結構あると聞きますが、この話では、太郎さんが謎めいていて魅力的でした。最近読んで面白かったのは、古川日出男さんの「ベルカ、吠えないのか」です。人間の愚かな争いごとに巻き込まれながらも、たくましく生きていく犬たちと子孫の話でしたが、島に取り残されるところから始まりワクワクして読みました。ただ、表現をもうちょっと考えて貰えなかったかなと思う部分が・・・(特に雌犬に関して)。
「エドガー・ソーテル物語」、シェイクスピアの物語がベースにあると考えると、納得が行くのですね。私は、エドガーが戻って来た時、犬たちが大人しくしていることに感心しました(普通は気配で気付かれる?隠れ場所も限定されるので見つかる可能性大?)最後は、やっぱりああでなければいけなかったのかな(←まだ言っている)。映画では、また別な最後を・・・、なんてことは無理でしょうか?
  1. 2013/11/14(木) 10:32:56 |
  2. URL |
  3. あき #XcHMMwdw
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