川の光日記

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夫です。ハナちゃんのこと(続き)。



タミーはただのタミー。タミーちゃんとは呼ばれない。
ハナちゃんは必ずハナちゃん。ハナと呼び捨てることはしない。

一昨年、家内がこのブログを始めたとき、その第1回目の冒頭に書いたことです。
ハナちゃんにいなくなられてみると、つくづく、タミーとハナちゃんは絶妙のコンビだったと思います。
タミーは、ハナちゃんにない陽気さ、生の肯定感、率直さ、社交性を溢れるばかりに持っている。
しかし、ハナちゃんはハナちゃんで、タミーにないすべてのものを持っていました。

わたしは前に、四人家族と書きました。
二人と二匹、などというしゃらくさい書きかたをする必要などまったくなかった。
わたしたちは四人家族以外の何ものでもなかった。
そして、その一人がいなくなるということは、全体のうちの四分の一を失うというだけのことではなかった。
わたしと家内の関係の中にも、ハナちゃんの存在は染みとおっていました。
家内とタミーの関係、わたしとタミーの関係も同じ。四人家族は相互に複雑に結びつき合い、
ぜんたいが緊密に連関したシステムのようになっていました。
ハナちゃんの消失は、たんに四分の一の部分が欠けてしまったということではなかった。
そのシステム全体が、一度ぜんぶ壊れたということです。

わたしの家庭は壊れてしまいました。
一瞬で、ぜんぶ、破壊されてしまいました。

もう一度、残った三人で、新しいシステムを構築し直さなければなりません。
それは可能だし、生きるためにはそうするほかはない。
しかしそれは、何と淋しい努力でしょう。

ハナちゃんがうちに来たのは2003年の11月中旬。
インターネットの里親サイトを通じて貰ってきた子です。路上で保護されたので正確な誕生日はわからず、
たぶん数日のずれはあると思いますが、わたしたちはとりあえず10月5日生まれと決めました。
(だから家内が以前に「あと一ヶ月で10歳」と書いたのは勘違い。ちょうど10年の生涯でした。)

あの日、ハナちゃんの誕生日だったその10月5日、家内が何かに導かれるように真っ直ぐ歩いてゆくのに、
わたしはタミーと一緒についていった。そして、渓谷に下る沢の斜面に、
黒と白のものを遠くから発見したときの衝撃は生涯忘れません。
何とか、ハナちゃんでないように──と念じながら近づいていって、
その希望がついえたときの絶望感も、忘れません。
わたしはハナちゃんを両手で胸の前に、捧げ持つようにして抱え、
右に左によろめきながら、なんとか足を交互に出して、家へ戻っていきました。
あの絶望的な数十秒も、生涯忘れません。
ずっと天を仰いで、何かを叫びつづけていたように思います。
このハナちゃんの体の、わたしがあまりにもよく知っている、この重さ、ないし軽さ。
しかし、それはもはや動かない、息をしていない、冷たい、濡れた体の重さでした。

肺から息が出尽くして声が出なくなると、また大きく息を吸って、また声をかぎりに叫びました。
家内も何か叫びつづけていたと思います。
号泣というのは、こういうことをいうのか。
「『あまちゃん』を見て号泣」などとふざけて言ったりするけれど……。
空を仰いでいたし、いずれにせよどうどうと流れつづける涙でまったく前が見えなかったのに、
そして、傾斜があったりでこぼこもあったりする草地なのに、
よくもまあつまづいて倒れたりもせず、木にぶつかりもせず、家まで帰ってこられたものです。
ふと頭を下げて前を見ると、いつの間にか、家のテラスのすぐ前まで来ているのが、ゆがんだ視界に映りました。
そのテラスのうえに、泥まみれのハナちゃんの遺骸をそっと置きました。
あとのことは家内の書いた通りです。

昨日は所用で、東京を日帰りで往復しました。人と笑顔で会話するのが辛いけれど、
軽井沢に残った家内の方がきっともっと辛いだろうと想像すると、こちらの辛さも増します。
だって、これまではタミーとハナちゃんと一緒に留守番をしていたのに、
今は彼女と一緒にいるのがタミーだけなのですから。

『川の光2──タミーを救え!』の入稿用原稿は中央公論社の打田さんに渡しました。
打田さんは『川の光』も『川の光 外伝』も、すみずみまで懇切なご配慮で作ってくれた人。
「私も松浦家のハナちゃんを忘れません」というメールをくださった打田さんは、
単行本化にすぐ取り掛かってくださる由。
『川の光2──タミーを救え!』の扉ページの裏には、
「とても賢くて、とても優しかった黒白猫、ハナちゃん(二〇〇三-二〇一三)の思い出に、本書を捧げる」
という献辞が載ることになります。

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  1. 2013/10/12(土) 10:14:35|
  2. ハナちゃん
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:10
<<10月の朝 | ホーム | 小諸>>

コメント

ハナちゃんと自分が同じ誕生日だと知ってびっくりです。ハナちゃんの誕生石はオパール、星座は天秤座ですね。
「ふるえる水滴の奏でるカデンツァ」が好きで、自分の誕生石オパールについての手入れの方法も知ることができて喜んでいたのですが、ハナちゃんの誕生石でもあったとは。オパールはハナちゃんにとても似合う貴石だと思います。(ハナちゃんは宝石に全く興味を示さないかもですが…)

このブログのファンである私にとって、タミーさんは「タミーさん」と仰ぎ見る存在で、生の輝きがまぶしく、溌剌とした姿もまぶしい存在でしたが、ハナちゃんはなぜかタミーさんよりも親しみやすい、「陰」をもった存在でした。
 私自身は中学生の時にお世話になった猫がねずみとりをたべていなくなってしまって、それから20年以上、なんとなく猫と暮らせないでいるのですが、そんな私にも写真の中のハナちゃんの視線は、ずっと見ていたいようなまなざしでした。
「川の光2」のページをめくる瞬間を待っています。
  1. 2013/10/12(土) 13:39:50 |
  2. URL |
  3. みえ #-
  4. [ 編集 ]

思わず涙ぐんでしまうような献辞

先生がミケちゃんと一緒に書かれた文章を読んで猫と暮らしはじめた者として、『川の光2』は冒頭から感涙必至の本となりそうです。

「秋の日の小路を歩きだして/どうしてももとへかえれない」

それでもハナちゃんは消えません。
このブログの一読者にすぎない私にとっても永遠の存在なのです。
  1. 2013/10/12(土) 13:52:12 |
  2. URL |
  3. ぷくしゅ #-
  4. [ 編集 ]

子猫のハナちゃん

今日で一週間ですね。たとえようもないつらいつらい一週間。十年前の11月の中頃、ハナちゃん、生後一か月少しで、先生とIZUMIさんの手のひらの中に、やってきてくれたんですね。まだ小さくて、赤ちゃん猫用のミルク、スポイトでですよね。ハナちゃん、上手に沢山飲みましたか?子猫時代のハナちゃん、さぞ愛らしかったでしょうね!こんなにも愛してくださるお二人に出逢えたハナちゃん。どんなにか愛されてすくすく育っていったハナちゃん。至福の十年でしたねハナちゃん!こんなにも愛されたから、こんなにも別れがつらいんですよね!ハナちゃん!我が家の猫達も、虹の橋のところで、ハナちゃんに、逢ったかもしれませんね。黒猫たちですよ。仲良くしてやって下さい。カツオのなまり節、うちのこ達も大好きでしたよ。実は、私も、大好物。甘辛く、生姜入れてよく煮ます。ハナちゃんの浸透圧で、色々と本とか読んでたでしょ。難しそうなのが多いけど、ハナちゃんのこと、想いながら、私も読んでみようかな~と、思っているところです。もうすぐ、先生の「川の光2ータミーを救え!」いよいよ、私たちの手元に、来てくれます。待ち遠しいです。おつらいなかですのに、先生、本当に、ありがとうございます。新作も、本当に楽しみにしています。先生のそばには、どんな時にも、かけがえのないIZUMIさんが、タミーちゃんが一緒です。もちろん、ハナちゃんも、心の中に、ゆるぎなく一緒です。そして、私たちフアンが、ぞろぞろと控えておりますよ!
  1. 2013/10/12(土) 14:40:20 |
  2. URL |
  3. アロマポット #3l8pHDnU
  4. [ 編集 ]

ハナちゃんの気持ちをくんであげて下さい。

読んでいて、胸が張り裂けそうになりました。忘れることは出来ないかもしれませんが、少しずつ悲しみが癒えますよう、心からお祈りします。うちの猫も若くはないので、きっとカウントダウンは始まっているでしょう。一緒にいられる時間を大切にしなければと思いました。
うちの前の前の猫は、死ぬ前日行方不明になり、少し先の民家の庭で動けなくなっている所を発見して連れて帰って来ました。その時は、半年前に私がもう一匹猫を拾ってしまったので、私の元で死ぬのが嫌だからそうしたのだろうと思いました。でも、後になり、動物がそういう行動を取る(群れから離れて死ぬ)ことがあることを知り、そうではなかったのかもしれないと思えるようになりました。確かに看取ることが出来れば、「人間は」満足するかもしれませんが、動物の立場からすれば不本意かもしれません(勿論、ケースバイケースですが)。ハナちゃんは、プライドも高く勘も鋭い猫ちゃんだったので、何かを悟った時、ご夫妻をなるべく悲しませないようにと考えて行動したのではないでしょうか。ご夫妻に辛い思いさせたり苦ませたりすることも、避けたかった筈です。もっともっと生きていて欲しかったし、残念で仕方ないですが、ハナちゃんの気持ちを理解して(ご夫妻が悲しんでいるのを見て一番辛いのは、きっとハナちゃんなので)、どうか、一日も早くお元気になられますよう御祈りしています。「川の光2」の刊行、ハナちゃんも喜ばれていることでしょう。本当にお疲れ様でした。私も楽しみにしています。
  1. 2013/10/12(土) 18:06:57 |
  2. URL |
  3. あき #XcHMMwdw
  4. [ 編集 ]

どんなにお辛いかと思うと、コメントができずにいました。私は老犬がいて、福島の被災動物のブログや犬猫関係の飼い主さんのブログを見ていますが、辛いのは、そうした方たちの愛犬、愛猫とどうしてもお別れの時が来てしまう記事です。動物たちはこの上ない大切なものを私たちに与えてくれるからこそ、喪失感は途方もないのですね。飼い主が先立ってはいけない以上、飼い主が悲しみを引き受けなければならないのはわかっていますが。 でもいつの日か,ハナちゃんの存在がストンとご夫妻の中に入って、自分の一部になることを願っています。
ハナちゃんはとても幸せなネコさんだったことは絶対にみんな確信しています。
  1. 2013/10/12(土) 19:21:20 |
  2. URL |
  3. mariko #InC0j.vM
  4. [ 編集 ]

代わりはない

ハナちゃんの死はご夫妻にとって家族の死、そのものなのでしょう。ハナちゃんは勿論、タミーちゃんも特別な存在であり『ペット』ではないのだと思います。だからハナちゃんの二代目はあり得ない、考えられないのではないかと思います。
『川の光2――タミーを救え!』が店頭に並ぶ日を心待ちにしております。
  1. 2013/10/12(土) 23:46:19 |
  2. URL |
  3. ビス丸のファン #-
  4. [ 編集 ]

小さな頃の思い出を

ハナちゃんは、生まれたばかりで、松浦家の一員になったんですね。
どんなに可愛かったことでしょう…。

いつか、ハナちゃんの小さなころの思い出を、聞かせてほしいなと思います。
私のなかでは、ハナちゃんは子猫にして日本の未来を憂いちゃうような、クレバーなイメージができあがっているのですが。
でももしかしたら、やんちゃでおてんばでいたずらっ子のハナちゃんもいたのかな? なんて想像しています。
  1. 2013/10/13(日) 00:20:08 |
  2. URL |
  3. inocco #BRwvxaDM
  4. [ 編集 ]

ハナちゃんのことは一生忘れません!

ハナちゃんはタミーちゃんのように、ストレートな社交的な性格ではなく、とてもシャイでとても恥ずかしがり屋さんだったのですね。愛情あふれる、原発のことまで心配してくれていた聡明で賢くて思いやりのあるとても優しい子です。私にとってもハナちゃんはいつまでも永遠に愛すべき存在です。ハナちゃん、いろいろありがとう!忘れません。
  1. 2013/10/13(日) 08:00:36 |
  2. URL |
  3. k@s #sYI06w5Q
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管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2013/10/13(日) 10:27:09 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

どうしても、やはり。。

松浦さんの悲嘆のコメントが続いてしまいますが、そもそも家族さえ持てないひともいるわけで。それに、ここに寄せられる多くのこころの籠ったコメントの数々を観るだけで、松浦さんには沢山の愛情にあふれたファンが付いているではありませんか。そのひと達はただそばにはいないだけで、松浦さんの真の友人たちではないでしょうか。ハナちゃんの居なくなったことはほんとうに驚きです。しかしまた、それは自然なことでもあります。我々も遅かれ早かれ死ぬはずですから。余りに松浦さんが悲嘆に暮れられていると、私も沢山のファンのひとたちも心が痛みます。松浦さんにも泉さんにもタミーにも見守ってくれる多くのファンが付いている事、その事を忘れずに一日も早く悲嘆から立ち直ってください。
  1. 2013/10/13(日) 17:52:26 |
  2. URL |
  3. ムル #5yrVOggo
  4. [ 編集 ]

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