川の光日記

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ワイズマン『動物園』の衝撃

陰隠滅滅とした日々が続いている。
夫が締め切り前で「生まれてこなければよかった」モードなのに加えて、
私が渋谷ユーロスペースで開催中のフレデリック・ワイズマン特集に通っているからだ。

ワイズマンは現代最高のドキュメンタリー映画作家といわれ、40年以上にわたって
アメリカを中心に学校、病院、軍隊、裁判所など、さまざまな“組織”を撮り続けている。
彼の作品には音楽もナレーションもない。登場人物の名前や肩書きを説明する字幕も入らない。
「いまどんなお気持ちですか?」とか「一日の来院者は平均何人ですか?」といったインタビューもない。
観客はいきなり映像のなかに投げ込まれ、何がどうなっているか自分で考えるしかない。

そんな監督のドキュメンタリーを、これまでいろいろな機会に15作品ほど見てきたが(それでも全39作品の半分に満たない)、
見ているうちにどうなるかというと、どんどん絶望的な気持ちになってくる。
人間嫌いが加速度的に募る、といってもいい。

ストーリーが方向付けされていないだけに、かえって画面に映し出される組織人間たちの残酷さ、鈍感さ、
視野の狭さ、狂信、偽善、「あ~早く帰ってビールでも飲みたい」的な官僚主義などが際立つ。
もちろん義務を一生懸命果たす真面目な人や、他人を支える良心的な人も登場するのだが、
なぜか負の面のほうが鋭く心に刺さるのだ。

ワイズマンを一躍有名にしたのは、監督デビュー作『チチカット・フォーリーズ』(’67)。
私がこれまで見たどんなホラーより恐ろしい映画である。
精神異常犯罪者の矯正施設を舞台に、人間は人間をここまでひどく扱えるのかと戦慄を禁じ得ないシーンが続出する。
あまりの惨さゆえ、’91年まで上映が禁じられていたほどだ。

そんなワイズマンが人間と動物の関係をテーマにしたのが、今回初めて見た『動物園』(’93)。
マイアミのメトロポリタン動物園で撮影された作品である。

wiseman01

カメラは最初のうちは、動物を見て笑いあう家族連れや、象の曲芸などを淡々と映し出す。
だが、雌のサイが子供を死産するあたりから、不穏な空気が漂い始める。
「来るぞ来るぞ~」と身構えていると、さっきまで死産を残念がっていた女医がすぐに気を取り直して
他の動物園に電話をかけまくり、
「サイの新鮮な死体があるんだけど、生殖器のホルマリン漬けいりません?」などと明るく提案する。

そして手際よくサイの赤ちゃんの内臓の分配を決めてしまうと、いそいそと解体にかかる。
それも手術室ではなく、焼却炉の前のコンクリの上で。
『悪魔のいけにえ』も顔負けの残虐な場面なのだが、動物園の職員たちは浮き浮きしている。
首を切られ、内臓を取り去られた死体はゴミのように焼却炉に投げ込まれる。

この後も、楽しそうな母子、ひょうきんなフラミンゴ、かわいいカワウソたちなどの映像の合間に、
撲殺されてアナコンダに丸呑みにされる子ウサギ、コモドオオトカゲの餌になるヒヨコ、
園内に忍び込んでシカを殺したために射殺される野犬などが映し出される。
映画は、着飾った男女がまずそうなサラダやエビのカクテルを食べ、ゴミの山を築く資金集めのパーティの場面で終わる。
(ちなみに最初のカットは吠えるライオンで、これはどう考えてもMGMのライオンへの皮肉だと思う)

wiseman02

上映終了後、私は鈍器で頭を殴られたような気分で、駅への道をふらふらと歩いた。
そもそも動物園という施設は、人間と動物の矛盾に満ちた関係を凝縮した場所で、
私たちはそのことをうっすら理解しているわけだが、それをここまで見せつけられる機会はあまりない。

人間を含む生物は、他の生物を犠牲にして生きている。その事実はどうしようもない…。
ドリトル先生だって、豚のガブガブを可愛がっていたけど、好物は豚肉だったはず…。
しかし人間は動物と違って、エプロン姿でにっこりする子豚をトンカツ屋のアイコンにしたり、倒錯した振舞いが多い…。
それにしても、同じワイズマンの『メイン州ベルファスト』では害獣として射殺されていたオオカミが、
この映画では麻酔をかけられ去勢手術されるのはやっぱりおかしいんじゃ…。
豚といえば、子供たちに豚を飼わせてから食肉処理所に送り込む、妻夫木聡主演の映画があったっけ…。
そういえば、『川の光2 タミーを救え!』のクマタカのキッドも、チッチとタータを見て一瞬「美味しそう」と思っていたではないか…。

さまざまな想念が浮かんでは消えた。

あまりにも大きな問題なので、引き続き、折に触れ、考えていきたいと思う。

「フレデリック・ワイズマンのすべて」 11月25日までユーロスペースにて
http://www.jc3.jp/wiseman2011/

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  1. 2011/11/21(月) 00:30:42|
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