川の光日記

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とりあえず平和な連休



連休である。
といっても、わたしたちはいわゆる自由業であるので、やっていることはいつもと変わらず、
タミーに点眼したり、ワクチンを打ったり、犬ごはんを作ったりする合間に
原稿を書いたり、本を読んだり、DVDを見たり、散歩したりしているだけなのだが…。

天気がいいので庭に出て、夫が作った昼食のラーメンを食べながら、
村上春樹問題について討議する。

「『多崎つくる~』が、ついに100万部を突破したわね」
「この先、文庫になってからもずっと売れ続けるんだろうなあ…(ため息)」
「いっそ、夫婦で村上春樹について語り合う便乗本企画なんてどうかしら?」
「帯にでかでかと『村上春樹』と謳われていて、よく見ると横に小さく
をめぐる対話』と書いてあるような本かい? 騙されてつい買ってしまう人がいるかな」
「多崎つくるの愛読書が『川の光』ならよかったのにねえ」
「ああ、ぼくもなんとかして時流に乗れないものかと…たぎるような野望が…」
「なんだか、さもしい話になってきたわね」
「しかし春樹さんはきっと、時流に乗りたいとか、人々からもてはやされたいなんて全然思ってないよ」
「そうかしら」
「だから売れるんだよ。とっても好い人なんだと思う。だから当然、書くものはあんまり…」

5月には夫の講演集『波打ち際に生きる』が刊行されるが、100万部を突破しないことはほぼ確実。
夫を時流に乗せるアイデア、大募集中。


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  1. 2013/04/29(月) 14:09:50|
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久しぶりに軽井沢




連休初日、久しぶりに軽井沢へ。
車は大渋滞に巻き込まれる恐れがあるので、新幹線で日帰り。
タミーの病気で大騒ぎしていたこの一か月は、軽井沢の家について考える余裕がほとんどなかった。
しかしこの間も、基礎工事は着々と進んでいたのだった。
本日は、土台の見学と、屋根・外壁・サッシなど外装関係の色と素材の打ち合わせ。

建設会社のオフィスで打ち合わせ後、担当のKさんに車で建設現場に連れて行ってもらう。
Kさんは「和製マルチェロ・マストロヤンニ」の異名をとった昭和の映画スター、船越英二に瓜二つ。
これまでスーツ姿しか見たことがなかったが、今日は午前中に地鎮祭の準備をしていたとかで、
グレーのジャンパーとスラックスで登場し、船越英二が作業服を着ているみたいでなんだか不思議だった。

現場に着くと、以前はただの原っぱだったところに、いきなりコンクリートの土台が出現していて驚いた。
「ほほお…」「ふうむ…」などと呟きながら、夫とふたり、訳知り顔で周囲を歩き回ってみる。
なんだかイメージしていたよりずいぶん小さいが、基礎の段階ではそう見えるのが普通らしい。

「7月末までにはなんとしても建ててください!」と無理をお願いしているこの工事。
このペースで行けば、ギリギリ間に合いそう。
がんばれタミー! この夏は涼しく過ごせるからね!

↓しかし、問題はやはりこの人。
我が家のカーストで最上位を占めているお方であるが、無理強いされるのが大嫌い。
車でおとなしく軽井沢まで拉致されてくれるだろうか。
拉致されたことに腹を立てて、家出したりしないだろうか。
心配の種は尽きない…。

P1050683b.jpg







  1. 2013/04/28(日) 00:28:47|
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涙目タミー



放射線治療から解放されて、ヒトも犬もほっとしている今日この頃。
タミーは元気で食欲旺盛、鼻も湿っているのだが、ちょっと気になるのが、涙目になりがちなことだ。

とくに目立つのが食事のときで、食べ終わるといつも両の目頭がぐっしょり濡れている。
まるで感極まって泣きながら食べたような感じ。
最近、食事内容が格段によくなったため、ものすごく食いつきがよくて、
「うほっ、うまい! うまい! ぐふっぐふっぐふっ」と興奮しながら夢中で食べているせいだろうか。
それとも放射線の影響が出始めているのだろうか。加齢のせいもあるのか。いろいろ心配…。

この後は、5月の半ばに簡単な健康チェック、6月下旬に再度MRI検査をやる予定。
なんとかこのまま小康状態を保って、犬の人生をまっとうさせてあげたい。

こんな状況のなか、わたしたちの救いはウクレレ。
まだ「真珠貝の歌」や「テネシー・ワルツ」くらいしか弾けないというのに、
早くも吉祥寺サンロードデビューを妄想中。
夫はアロハシャツ、私は腰蓑をまとって
「ウクレレ文芸漫談」を披露したらけっこう受けるのではあるまいか。

それにしてもなぜわたしたちの妄想はいつも「旅芸人一座」的な方向へと向かうのか…。

  1. 2013/04/25(木) 19:19:50|
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虚脱状態のなか村上春樹を読む



数日の間、躁状態に包まれていた我が家に、ようやく平常が戻ってきた。
いつまでも奇声を発しながらウクレレをかき鳴らしたり、
ケーキのドカ食いをしたりして浮かれてばかりはいられない。
検査の結果が予想を超えてよかったとはいえ、タミーはまだ完治してはいないのだから。
これから、腫瘍を抑え込むための、地味で長い闘いが始まるのだ…。

しかしとにかく、ここ一か月の張りつめた気持ちがかなり楽になったのは事実である。
思えばこの間、ほとんど映画も見ていないし、読むのは癌や犬の健康に関する本ばかりだった。
そんなわけで、躁のあとの虚脱状態のなか、久しぶりに話題の新刊でも…と手に取ったのは、
村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。

夫はいま新聞の文芸時評を担当しているため、さすがに刊行が国民的ニュースとなった
この本をパスするわけにはいかず、早々に読み終えたのものの、かなり悩んでいる様子。
村上春樹は、評価しても批判してもどこからか必ず異論が出てくる作家であり、
「褒めても地獄、貶しても地獄」ということらしい。
「褒めてるんだか貶してるんだかわからないように書けばいいのではないか?」と提案したが、
それはそれで、なかなか難しいものがあるらしい。

私はといえば、もともと村上春樹のいい読者とはいえず、小説より旅行記のほうが好きだったりするため、
過度な期待は抱かずに肩の力を抜いて臨んだところ、いつものようにあっという間に読み終わり、
それなりに楽しめたし、読後感も決してわるくはなかった。

もちろん、いつものように、疑問符がつく箇所は山のようにある。
「たぶん」とか「あるいは」とか「ある意味では」が頻出する、歯の浮くような翻訳調の会話。
いまの日本に「フォースと共に歩みなさい。鮭に負けないように」なんて言う38歳の女がいるだろうか?
私だったら、そんなセリフを吐かれたら、即座に5メートルくらい後ずさってしまうと思うのだが。
そして、毎度おなじみの、主人公のひとりよがりな人物像。
いつも受け身で、他人と深い関わりをもたず、異常なまでに几帳面できれい好きでむっつりスケベ。
無個性なのに女性にもてまくり、旧友からも「おまえが一番男前だった」などと褒められる。

すべてが作り物めいてわざとらしい(よく言えば「寓話的な」)この小説のなかで、
ひとつだけどうしようもないほど生々しくてリアルなものがある。
それは主人公の救いようのない“孤独”だ。
おそらくこの一点で、村上春樹は多くの読者の心を捉えているのだろうなあ、と思う。

この作品はある意味で、『ノルウェイの森』の21世紀版の変奏でもある。
登場人物の配置もほぼ同じだし、主人公がフィンランドに行くのも、たぶんそのことと関係がある。
それまで才能が注目されてはいたが新進作家のひとりにすぎなかった村上春樹は、
『ノルウェイの森』によって大ベストセラー作家になり、同時に絶対的な孤独のなかに追いやられた。
その当時の心境は旅行記『遠い太鼓』などにかなり率直に書かれているけれど、
『色彩を持たない~』は、そんな自分の作家としての歩みを振り返る“巡礼”の試みなのかもしれない。

なお、夫の苦慮苦悶の結果は、水曜日の朝日新聞の朝刊に掲載されるので、お楽しみに。

  1. 2013/04/22(月) 15:26:34|
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夫の日記 その7



このひと月、心配してくださり、応援してくださり、
さまざまな有益な助言をくださった皆さん、ほんとうに有難うございました!

タミーは回復しつつあります!

一昨日撮ったMRI画像を、できたら皆さんにぜひご覧に入れたいものです。
3月21日に撮った画像では、左の鼻腔の上部ぜんたいを占めるような、
大きな、濃い白い影があったのです。それは相当、ショッキングな光景でした。
それで打ちのめされてしまったのでした。わたしどもの素人目には、
「初期ガン」というけれど、いったいこれのどこが「初期」なんだ、
とすくみあがってしまうほどのものでした。

ところが、一昨日(4月17日)の画像では、それがほとんど消え、
ほぼ右側の鼻腔と同じになり、つまりほぼ左右相称の画像になっていました。
まだここにガンが残っていますと、澤田先生(明るくて優しい、若いすてきな女医さん)が
指さすところによくよく目を凝らすと、専門家に言われないとわからないような、
ほんの小さな、薄ぼんやりした白い影が残っている程度。
しかも、一昨日当てた放射線の効果は、これから出るはずなのですから。

いや、ほんとに……。
涙、涙……です。

いやはや、ほんとうに苦しいひと月でした。
まあ、ガンとの戦いはこれから長く続くかもしれません。
しかし、8歳の誕生日さえ迎えられずに死んでしまうという悲劇からは、
タミーはとりあえず、遠ざかったような気がします。

ずっとタミーの容態をご心配くださり、同情と励ましの気持ちの波動を
わたしたちに送りつづけてくださった皆さんに、心からお礼申し上げます。
(松浦寿輝)


  1. 2013/04/20(土) 11:51:59|
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タミー、劇的に回復する



ついにやってきた、放射線治療の最終日。
察しのいいタミーは、もう今日が「あの日」だとわかっているので、
朝食や水をねだることもなく、玄関で「伏せ」の姿勢で静かにしている。
タミーは昔から、頭がよくて優しくて、いろんなことをすぐに見抜いてしまう犬だった。
会社勤めをしていたころ、酔っぱらって夜中の2時に帰っても、玄関まで笑顔で迎えにきてくれたっけ。
あのころは仕事もけっこう忙しくて、長い留守番で、寂しい思いをさせてしまったこともあったっけ…。

11時に病院に到着、タミーを先生に預ける。
「今日は途中経過を見るために、MRI検査もやります」と告げられる。
迎えの時間はいつもより若干遅い午後一時半。

前回「検査は2か月後」と聞いていたので、今日の検査は不意打ちというか、
夫も私も、心構えがまったくできておらず、うろたえる。
もし、放射線の効果が、ほとんど出ていなかったとしたら?
一か月前に見た、MRI画像のもやもやした白い影が、そのままの形で残っていたら?

すっかりおなじみになってしまった武蔵境の街を、わたしたちは心ここにあらずで徘徊する。
よく味もわからず昼食をそそくさと済ませ、駅前の図書館で時間をつぶし、
それでもまだ時間があるので、早めに病院へ。

わたしたちがお世話になっている病院の名称は
「日本獣医生命科学大学付属医療センター」といって、その名のとおり、すぐ横に獣医大学がある。
待合室にいるのも息が詰まるので、キャンパスの中央に設置された、
ホルスタイン牛をかたどった謎の強化プラスチック製のベンチに座って、
ボール遊びに興じる未来の獣医さんたちをぼんやり眺める。

「若いって、いいよね…」
「ああやって、ただボールを投げ合ってるのが面白いんだからなあ…」
「でも30年後のある日、はっと気が付くんだよね」
「そう、一番いい時期はもう過ぎ去ってしまったという残酷な事実にね」
「白髪は増えるし老眼は進むし、映画俳優の名前は思い出せなくなるし」
「それなのに犬も猫も、自分を追い越して先に死んでしまう」
「タミーとハナちゃんが死んじゃったら、熱帯魚でも飼うかしらね…」
「でも魚だって、飼っているうちに感情移入しちゃうかもしれないよ…」

二人してとめどもなく暗い想念に身を任せているうちに、いつのまにか一時半になっていた。
「松浦タミーちゃん、○番診察室へどうぞ~」とのアナウンスに、こちこちになって立ち上がるわたしたち。
いつものように少し涙目になり、興奮はしているものの元気そうなタミーと再会。
診療台脇のライトボックスに、撮ったばかりのMRIの画像が掲げられる。
画像が示していたのは、素人目にもはっきりわかる、タミーの劇的な回復だった。

左鼻腔の上半分を埋め尽くしていた影が、ほとんど消えてなくなっている。
炎症による分泌物で灰色に染まっていた部分も、右の鼻腔と同じ状態に戻っている。
「これは過去3回の照射の結果で、今日の分はまだ反映されていないので、
経過は良好といっていいと思います」と先生。

この2時間半ほど、ゾンビのように陰気な夫婦となって時間をつぶしてきたわたしたちは、
しばらく事態の成り行きをうまく把握できず、茫然としてしまう。
30秒くらい経過して、にわかに歓喜がこみあげてくる。
何度この場面を頭のなかで思い描いてきたかわからないのだが、
タミーの腫瘍が、本当に、本当に小さくなっている!

もちろん、専門家の目で見ると、腫瘍が完全に消えたわけではないらしい。
今後は、この状態をどこまで維持できるか、という勝負になってくる。
放射線治療の副作用も、これから出てくる可能性がある。

しかし! とにかくタミーはよくなっているのだ!
このまま行けば、この夏は軽井沢で走り回れるのだ! 

帰りの車でわたしたちはゾンビから一転、早口にしゃべりまくるハイでおかしな夫婦となり、
戸惑い気味のタミーの肩に腕をまわして「よくやった!よくやった!」と叫び、
作詞作曲が未完の「犬の人生」を合唱した。
今日はこれから、武蔵境のイトーヨーカドーで買った焼き鳥で祝宴だ!

そして、この場を借りて、この一か月間、
さまざまな形でタミーとわたしたちを応援してくださった皆さんにお礼を申し上げます。
まだタミーは全快したわけではありません。
でも、ここまで順調に回復できたのは、皆さんのおかげです。
本当に、本当に、ありがとうございました!






  1. 2013/04/17(水) 16:44:29|
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夫の日記 その6



というわけで、わたしたちはウクレレを弾いたり、うどんを茹でたり、
犬に丸山ワクチンを注射したりしながら、日々をおくっている。
タミーの腫瘍については、やるべきことはすべてやった(やっている)。
後は天命を待つのみ。

東大の獣医学研究室の森裕司先生は、「飼い主による早期発見、
かかりつけ獣医師の的確な判断、専門医による診断とセカンドオピニオンの一致、
ご自宅の近くで高度医療を受けられることなど、タミーちゃんは運にも恵まれていると感じます」
というご親切なメールを下さった。
「あとはタミーちゃんの持つ治癒力でこの試練を乗り切ってくれることをお祈りいたします」と。
私たちの思いももう、この言葉に尽きている。

がんなどに罹ってしまったけれど、それでもまだわたしは、
タミーは強運な犬だという思いを捨てきれないでいる。
こいつの脳天気な顔を見ていると、そんな気がしてならない。
こいつの強運で、何とかなるのではないか。
……何とかならないかもしれないけれど。
まあ、先のことにはあまり思いわずらうまい。

桑原さんが「松浦家の正念場だねえ」と言ってくれたことは前に書いた。
わたしもここが踏ん張りどころだと思ったものだが、しかし結局、わたしたちはこの「正念場」を、
ウクレレを弾きながらへらへら笑って切り抜けることにしたのだ。
これは正しい選択だったのではないか。
さしあたって、踏ん張るのはやめよう。踏ん張るとつい、つんのめって転んでしまいかねないから。

放射線治療は今週水曜が最後の4回目で、それで終わり。
気候が良くなってきた。タミーは絶好調で、朝夕、にこにこしながら元気に走り回っている。



  1. 2013/04/14(日) 12:44:27|
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それでもウクレレ Part2



夫がウクレレをかき鳴らしながら歌っている。

まだ習い始めて1週間で、コードも6つしか知らないし、
そのうち満足に鳴らせるのは3つくらいだというのに、
自作の歌の作詞作曲まで始めてしまった。

犬の人生
作詞・作曲=松浦寿輝

犬の人生
犬の人生
犬の人生
わうわう わうわう
楽しやな 哀しやな
わうわう わうわう
楽しやな 哀しやな
(未完)

スーツを着ているのは、これから某文学賞の選考会に出かけるから。

P1050693b.jpg
おとうさんはなぜ歌い、そして踊っているのかなあ…(とふと疑問に思うタミー)

P1050654b.jpg
ハナちゃんはお気に入りの場所(チェスボードの中央)に陣取り、冷静に事態の推移を見守っている。

犬を看病しながらウクレレにはまる夫婦って、結構珍しいのではないか。
わたしたちはついに、マイ譜面台まで買ってしまったのである。
ネットで一台特価680円なり。

  1. 2013/04/11(木) 19:31:46|
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放射線治療、第三回目



こんな夢を見た。
私は知らない町に来ている。タミーのために何かの書類がどうしても必要なのだ。
指定された時間より前に最寄の駅に到着したので、時間をつぶすために陰気な雰囲気のピザ屋に入る。
ところがいつまでたっても何も出てこない。どうやら厨房の誰かが脱法ハーブで逮捕されてしまったらしい。
壁のポスターを見ると「くまのプーさんのピザに脱法ハーブが入っていることは合理的に証明されています」
などとわけのわからない言い訳が書いてある。私はなんだか悔しくてたまらなくなり、
金髪の店員に向かって大声で叫ぶが、肌がぬめっとして毛穴が目立つその若者は、へらへら笑っているばかりだ。
気が付くと外は暗くなっている。私は慌てて店を飛び出す。
よく考えたら、書類を受け取るためにどこに行けばいいのか、まったくわかっていなかった。
私はおろおろと見知らぬ町を駆け回る。あたりの風景は台北のようでもあり、エジンバラのようでもある。
夜になってランタンが灯り、濡れた街路を照らし出すが、どこにも行きつけない…。

はっと目が覚めると、ハナちゃんが両脚の間で漬物石のように重い塊になって寝ていた。
隣にはタミーの大きな丸い背中。そうだ。今日は三回目の放射線治療の日だった。

タミーは昨晩からなんとなく、明日が病院に行く日であることを察知していたようだ。
おとなしく車に乗っていたが、病院の駐車場に入ると「クフ、クフ、クフ」と不安そうな小さな声を何回か出す。
いったん車を降りると、通行人や待合室の人々に愛想をふりまく、いつものタミーに戻るのだが。

1時間後に迎えに行くと、またしても少々興奮気味で、麻酔の影響か、舌の色が赤黒く、両目が涙目になっている。
ああタミー、ごめんね。本当にごめんね。あと一回で終わりだからね。

帰宅後しばらくして水を飲み、ごはんを食べると完全復活。
舌の色もれいなピンクに戻り、疲れが出たのか、おとうさんのおなかを枕にすやすや眠り始める。
このところ、鼻血は全然出ていないし、くしゃみもほとんどしないし、いびきも前ほどかかない。
そして、左の鼻の乾いてかさついていた部分に、湿り気が戻ってきているようだ。
放射線やその他もろもろが効いてきているのではないか、と思いたい。


  1. 2013/04/10(水) 22:43:47|
  2. 日記
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犬ごはんの愉しみ

犬ごはん作りは愉しい。
タミーが病気にならなければ、もしかしたらこれほど凝ったごはんは作っていなかったかもしれず、
この愉しみを知ることもなかったかもしれない。

さて今日も、台所で密かに犬ごはんの準備を始める。
本日は、人間用に鶏ガラでスープストックをまとめて作ったので、
それを100ccほど犬にもおすそわけして、
ほうれんそうと「とり農園」の新鮮な鶏レバーを煮てやることにした。
ふふふふ…これはうまいですよきっと。

ふと、背後に何かの気配を感じて振り向く。



するとそこにはいつの間にか、「ごはん、たのしみだね~」と顔に書いてある犬が…。

背中に犬の視線を感じながら、スープで野菜とレバーを煮て、人肌になるまで冷ます。
雑穀とドライフード少々の上に静かに注ぎ、染みわたるのを待ってから、
酵素、ミネラル、キノコのパウダー、オイルなど、各種サプリメントを投入。
病院からもらってきた抗腫瘍薬もそっと一錠混ぜ込む。

P1050637b.jpg
↑仕上がりはこんな感じ。

P1050638b.jpg

このころになるともう犬も余裕の表情ではいられない。
もう早く食べたくて必死である。

さらに1分ほど「待て」をしてから、やっと食事開始。

ちなみに、スヌーピーは、これまで使ってきた犬ごはんの皿の写真を全部アルバムに収めて持っていて、
たまに眺めていろいろ思い出して楽しむのが趣味らしいが、
タミーは家に来たときからずっとこのごはん皿。頑丈な陶製で、もう7年も使っていることになる。

明日はどんな犬ごはんにしようかな…。



  1. 2013/04/07(日) 23:29:20|
  2. タミー
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それでもウクレレ



曇り、のち晴れ。近所の公園に散歩に出かける。
タミーは本日も絶好調。本当に放射線治療中のガン患者なのかきみは。

ボール遊びに興じていると、ご近所に住む漫画家の西原さんと愛犬のポン美ちゃんがやってきた。

P1050648b.jpg

↑ぽん美ちゃんは保護施設にいたところを西原さんにレスキューされ、いまは幸せいっぱい。

P1050651b.jpg

↑やさしく撫で撫でしてもらってご機嫌なタミー。
西原さんによると、放射線治療中は、脂肪が少しつきすぎたくらいの体型のほうがいいそうである。
脂肪層の厚みならタミーは誰にも負けない。なんだかちょっぴりうれしくなる。

午後、夫とウクレレ教室に出かける。
ご近所の友人Kさんにウクレレをプレゼントされたのをきっかけに、
どうせなら二人で習おうとしばらく前に申し込んでいたコースで、今日がレッスンの初日。
一時はキャンセルするつもりでいたのだが、話し合いの結果、
こんなときこそ新しいことに挑戦すべきなのではという結論に達し、初志貫徹で通うことにした。

わたしたちはウクレレのウの字も知らないずぶの素人なので、まずチューニングから教えてもらう。
その後「旅愁」とか「森の小径」といった初心者向けの曲を奏でながら、
C,F, G7,C7,G, D7 の6つのコードをなんとか覚える。
意外に左手の指の力が必要で、終わると左肩がガチガチに凝っていた。
しばらく使っていなかった脳の部位が刺激されたような不思議な感覚。

帰り道、ジム帰りの川上弘美さんに遭遇し、3人でお茶。
3年前の春、タミーを連れて川上さんたちと井の頭公園にお花見に行き、
夢のように楽しい時間を過ごしたことを思い出す。

帰宅後、タミーに点眼し、丸山ワクチンを注射。
夫も私も、そのうち犬注射のエキスパートになってしまうかもしれない。
夕方、犬友達のKさん夫妻とOさんが、犬のポレちゃん(イエローラブ)、フーちゃん(ゴールデン)を
連れて遊びにきてくれる。レトリバー3匹揃い踏みはなかなか壮観。
タミーのために布のボール、手作りの犬食器洗い、ハーブの詰め合わせなど、いろいろいただく。ありがたし。

いろんな人に可愛がってもらって、今日もタミーはにこにこと笑顔で過ごせた。
そのことに感謝しつつ、これからも一日一日を大切にしようと決意を新たにする。



  1. 2013/04/05(金) 17:12:06|
  2. 日記
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タミーのボール論



タミーが突然「ボール論」というエッセイを書いたので、急遽掲載。

******************************

ボール論
作:タミー
代筆:タミーのおとうさん

 ボールのみりょくについて、てみじかに論じてみたい。

 そのみりょくは、およそ3点にぶんるいできるだろう。

 追いかけるのがおもしろいということが、まず第1にあげられる。
「さ、なげろ、なげるんだ!」とぼくが声をかけると、おとうさんやおかあさんが
ボールをとおくへなげる。それを追いかけて、ひろってもってかえってくるのだ。
これはおもしろいぞ。
 ぼくは「ハイバウンドボール」がすきなのだが、それというのも、これが名前のとおり
よくはずむからだ。ボールがはずんだところを、はしりながらジャンプして、
いっぱつで空中キャッチするのが、ぼくはとくいである。
 ときどきじめんのでこぼこのせいで、イレギュラーバウンドして、おもいがけない
方向にはずむが、これもおもしろい。また、たまに、うっかり見うしなってしまうこともあるが、
あちこちさがして草むらのなかなどから見つけだすのもおもしろい。

 第2に、あおむけになってボールをからだの下にしき、ごろりん、ごろりんと転げまわるのも、
なかなか、おつなものである。ボールがせなかやわき腹にあたってごろごろするかんしょくが、
とてもよいのである。ああ、このボールはぼくのものなんだなあ、というしみじみした思いが、
こみあげてくるのである。
 地面がぬれてどろどろだったりするばあい、おとうさんたちは、「タミー、やめろ、からだが
よごれちゃうから」といいます。でも、ぼくがやめずにごろりん、ごろりんと転げまわりつづけていると、
「あーあ、もう。かってにしなさい」といいます。そして、うちにかえると、からだについた泥を
シャワーできれいに落としてくれます。

 ボールの第3番目のみりょくは、ぼくの口からとれないということだ。え、よくわからないって? 
では、せつめいしよう。まずボールをしっかり口にくわえる。そして、おとうさんたちに、
「さ、このボールを、ぼくの口からとろうとしてみてください!」とちょうせんする。
にんげんはボールをとろうとするが、ぼくがすばやく首をふり、のびてくる手をかいくぐって
よけつづけるので、にんげんはなかなかボールをつかめない。
 まあ、さいごにはボールをつかまれてしまうが、しかしそれでも、ぼくがしっかり
かみしめているので、にんげんはどうしてもボールをとれないのだ。これはおもしろいぞ。

 「タミー、そのあそびは、どこがおもしろいのか、おとうさんにはさっぱりわからないんだよ」と
しまいにはおとうさんは、うんざりしたひょうじょうでいいます。
「いつまでたってもおわらないだろ? おとうさんはあきちゃったから、さ、もうボールを放しなさい。
もううちに帰ろうよ」
 えー、つまんないよ。もっとあそんでいたいのに。そこでぼくは、「さ、おとうさん、もういちど
このボールを、ぼくの口からとろうとしてみてください!」とめいじる。そこでおとうさんはまた
ボールをとろうとするのだが、やっぱり、どうしてもとれないのである。ひじょうにおもしろい。
このおもしろさがわからないおとうさんは、少しあたまが悪いのかもしれない。

 というわけで、今回、ボールのみりょくというものを、3点にぶんるいせいりして論じてみた。
これをきかいに、ボールのみりょくというものが、もっとひろく世のなかに知られるようになれば、
ぼくとしてもたいへんうれしく、またこうえいにおもう。

 以上です。おわりです。

P1050639b.jpg
↑製造中止になるかもしれないと聞いて、あわてて買い占めたハイバウンドボール。

  1. 2013/04/04(木) 18:10:17|
  2. タミー
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二回目の放射線治療



朝から春の嵐が吹き荒れている。
「あれ? 朝ごはんはないの? 水ものめないんだね????」
とくりくりした目で迫るタミーを、心を鬼にして無視して車に乗せ、10時半に家を出発し、
日獣医の動物医療センターへ。11時から第二回目の放射線治療の予約がある。

12時に引き取りにいくと、タミーの麻酔はすでに覚めて、いつものとおりピンピンしている。
だが今日から2種類の薬を一日3回、左目に点眼しなければならない。
副作用には個体差があり、治療3週目くらいから少しずつ脱毛が始まる子もいれば、
治療後1か月でどっと毛が抜ける子もいるという。
でも、部分的にハゲるくらい全然OKだ! 毛はまた生えてくるのだ!

放射線治療はあと2回で終了し、その2か月後に再びMRI検査をして腫瘍の状況をみる。
つまり、6月下旬になるまでは、治療の効果のほどはわからない。長期戦である。
その間あれこれ思い煩っても仕方がないので、目いっぱい前向きにいこうと思う。
あまり長い間落ち込んでいられない能天気な私の性格が、こういうときこそ力を発揮する…はずだ。

帰宅後、夕方までタミーを休ませてから、野川公園へ。
雨はあがり、異様なほどきれいな、ほとんどシュールな夕焼けの空が広がっている。
タミーは無邪気に飛び回り、ちょっと目を離したすきに川にダイブ。
この様子を見ていると、とてもガン患者とは思えない。

本日のタミーの夕食は、昆布としいたけのだしでさっと煮た生タラとブロッコリ、
雑穀、すりゴマ、大根おろし、ドライフード少々、亜麻仁油、各種サプリメント。
いろいろ勉強して、ガンの犬には赤身の肉はあまりよくないことがわかったので、
今後、動物性タンパク質は魚と鶏中心にしようと思っている。

最近、夫はタミーを気遣って、タミーの体を抱え上げて車の乗り降りをさせている。
38キロもある犬なので、その様子はまるでフェリーニの『道』の怪力芸人ザンパノのようだ。
タミーとハナちゃんと4人で流浪の旅芸人一座になる光景をふと想像してみる。
ハナちゃんは帽子をくわえて小銭をあつめて回る係。
私はジェルソミーナ役を担当して、トランペットでニノ・ロータ風の哀切なメロディを奏でる。
いやトランペットは吹けないからウクレレでいいか。
犬を持ち上げるだけの芸で、どれだけおひねりがもらえるかはわからないけれども…。

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  1. 2013/04/03(水) 22:58:11|
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夫の日記その5(2013・4・1)



前にも書いたことがあるけれど、タミーとはわたしたちにとって、ひとことで言えば「ギフト」だった。
天からの「ギフト」、途方もない「ギフト」だった。
タミーは「驚き」だった。
タミーと生きることは、毎日、尽きることのない幸福感を体験しつづけることだったし、今でもそうだ。
世界のすべてを受け入れ、それを留保なしに肯定してしまうタミーの楽天主義の力強さに、
わたしたち夫婦は日々ほんとうに驚かされ、笑わされ、励まされている。
『巴』や『あやめ 鰈 ひかがみ』の作者だった男が、とつぜん『川の光』を書いたというので、
みんな驚いたけれど、なあに、簡単なことなのだ。
きっかけは一頭のゴールデン・レトリーバーの赤ちゃんにすぎない。
タミーとの出会いが、わたしを世界に向かって開いてくれたのだ。
『川の光』『川の光──外伝』『川の光2──タミーを救え!』の3部作全体に沁み渡っている世界観は、
タミーの世界観なのである。

ついでに言えば、俗な話になるけれど、タミーはずいぶんお金も稼いでくれた。
『川の光』は、わたしの本としては例外的によく売れた。
いやいや、東野圭吾さんだの伊坂幸太郎さんだのに比べれば、とうてい問題になりませんよ。
けたが1つか2つ違う。最初の『川の光』は小さな増刷を重ねて、総計5万部弱。
それでもまあ、わたしにとっては大した数字である。
その印税は一応、わたしの銀行口座に振り込まれたけれど、ほんとうはその半分くらいはタミーのものである。
だって、そもそも、タミーがいなければ書かなかったし、書けなかった本なのだから。
残りは、筋やエピソードを一緒に考えてくれた家内が4分の1、
わたしのとりぶんは最後の4分の1程度にすぎまい(ちなみに、ハナちゃんのとりぶんはありません。
あのひとはただ寝ころんでゴロゴロのどを鳴らしていただけですから)。

だから、こんどの軽井沢の小さな山小屋も、前回は「タミーのために建ててやることにした」などと
偉そうに書いたけれど、実はタミーが自分のお金で建てたようなものである。
土地はわたしの退職金で買ったが、家の建設費くらいはタミーが稼ぎ出しているのだ。
その家で、何とかタミーをいく夏か過ごさせてやりたいと、心の底から願っている。
(松浦寿輝)

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  1. 2013/04/01(月) 12:12:37|
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