川の光日記

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このごろの我が家

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もうすぐ5月も終わり。庭のジューンベリーが赤い実をたくさんつけている。
鳥たちはこの甘い実が大好物。ヒヨドリ、シジュウカラ、メジロなどが大挙してやってきては夢中でついばんでいる。

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その光景を食い入るように見つめる一対の緑の目…そう、ハナちゃんである。

「ハナちゃん、駄目だよ! お願いだからあの鳥たちを襲わないでね」
「あら、見てるだけよ、安心して」(←と言いつつ目を離さない)
「あと、イモリさんを家の中に連れてきていたぶるのもやめてね、気の毒だから」
「そう?残念…遊び相手としては最高なのに」
「イモリさんはおそらく、遊びとは認識してないと思うよ…」
「そうなの? 尾っぽを自分で切り離したりして、けっこう楽しそうに逃げ回ってるけど」

外猫飼いの方はご存知だとと思うが、この季節、
拉致監禁の末に絶命した、いたましいイモリさんの遺体が時々発見されるのである…。

いっぽうタミーは、次第に暑くなってきたせいか、体温を下げるために床にぺったり寝ている時間が増えた。

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先日の金冠日食の朝には、「さあ空を見るのよ! いまからお母さんが太陽を黒くしてみせるから!」と宣言して
信じやすいタミーを驚愕させる計画だったのだが、前夜に深酒をしてしまい、寝坊してあえなく挫折した。
しかし後で聞いたところでは、日食といっても別に真昼の暗黒が訪れるわけではなく、薄暗くなる程度だったらしいので、
タミーも「???」と思うだけで、あまり驚かなかったかもしれない。

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夫は最近、新聞で文芸時評の連載を始めたため、文芸誌や新刊の文芸書をチェックするのに大忙し。
そんななか、辻佐保子さんが夫の思い出をつづった『辻邦生のために』(中公文庫)を読んで、
いろいろ思うところがあったらしい。

「きみも、おちゃらけ創作対話ばかり書いていないで、僕の死後、
こういうしみじみとした、情愛に満ちた本を出したらどうです?」
「う~ん、こんなに立派な方と同じことをせよと言われても…」
「まあ辻佐保子さんは、大学の名誉教授だからなあ」
「それに、私が先に死ぬ可能性だってあるわけだし」
「それもありうるな。その場合は、僕が創作対話満載で、一冊書いてあげるよ!」

おちゃらけ創作対話で一冊…どうやら「妻と私の愛情秘話」的な本にはなりそうもない。
というか、いったい何を書かれることやら、わかったものではない。
別に長生きはしたくないけれど、あんまり早く死ぬのも考えものだ、と考え込んでしまった私であった。



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  1. 2012/05/29(火) 20:20:01|
  2. 日記
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地下鉄サムの詩つづき

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今朝、朝刊で『川の光2』を読んでびっくり。サムの詩にはまだ続きがあった。
チッチとタータの拍手に気をよくしたサムは、さらに一篇の詩を朗誦する。
「これはですね、ぼくがかつて恋愛していたときの作品です。さ、心の準備はいいかね?」

速度、白、速度、白!
瞬間の愛、真夜中の太陽!
永遠とは、かなしい南京豆の殻
無限とは、くるおしい日時計(サンダイヤル)
光をやすやすと追い抜くぼくの愛!
黒、直角、黒、直角!
甘い甘い飴玉さん、
とってもキュートな
むちむち白イタチさん!


昨日の吉田一穂ばりの詩篇とはまた違う作風だ。
とくに最後の三行が脱力を誘う。

「きのうの詩はあんなにカッコよかったのに…“むちむち白イタチさん”って…」
「あ、その三行はサムの個人的な恋愛感情の発露なんだよ。
彼はそのデブのフェレットを心底愛していたんだねえ」
「きょうのこの詩は、いったいどこから来てるの?」
「ハンス・アルプをイメージしてみたんだけどね」
「なるほど、サムはダダイストだったのね…」
「地下鉄の住人だから、都会派の前衛詩人なわけだよ」

ハンス・アルプ(1886~1966)は前衛彫刻家・画家として有名だが、
最初は詩人として出発した。
その作風は、たとえばこんな感じ。

おやまあ虚無には底がない。
おやまあ虚無には家具がない。
だから君たちが用意おさおさ怠りない、
救急箱も役にたたない。
  (「シュネートレヘム」)

糸みたいな道化師が
糸みたいな道化師の
瘤の上によじのぼり
この糸みたいな道化師の
瘤の上に
また糸みたいな道化師がよじのぼり
以下右に同じ
  (「アメリカ」)

(以上、種村季弘『ナンセンス詩人の肖像』より抜粋)

↓本人はこんな感じ。
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いろんな詩人の影響を露骨に受けているものの、サムが才能豊かなフェレットなのは確かだ。
そのうちぜひ、自費で詩集を出版していただきたい。
だが、その前にチッチとタータを早いとこ、東京タワーまで案内してやってほしいものだ…。

  1. 2012/05/25(金) 11:39:14|
  2. 川の光
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地下鉄サムと吉田一穂

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今日の『川の光2』で、フェレットの地下鉄サムが詩人であることが判明した。
サムは「おお、おお、詩が湧いてきたぞ――」と叫んだかと思うと、
あっけにとられているチッチとタータの前で、歌うように語るように朗誦しはじめる…

闇をつらぬいて飛ぶ
想像力(イマジネーション)の火矢!
あおざめた距離(ディスタンス)
幽かな迷景(ミラージュ)
放物線の甘美を拒み
あくまで鋭く速く
直線状に囀れ
わが魂の凶鳥よ!


「ん?どこかで聞いたような?」と思われる方もいるだろう。
そう、サムはどうやら、大正~昭和期の詩人、吉田一穂(1898~1973)に影響を受けているようなのだ。

無題
↑なんとなくルックスもサムに似ているような…。

吉田一穂は津軽海峡に面した北海道の漁村に生まれ、早稲田大学の英文科に入学。
大正15年に第一詩集『海の聖母』を刊行する。
この詩集の巻頭に置かれた「母」は北原白秋が激賞した一穂の代表作である。 

あヽ麗はしい距離(ディスタンス)、
つねに遠のいてゆく風景‥‥

悲しみの彼方、母への、
捜り打つ夜半の最弱音(ピアニッシモ)。


そのものずばり「地下鉄のある町」と題された詩篇もある(昭和5年刊『故園の書』)。

 計数された歳の基石・プロレタリヤの地と汗と骨のバラストの上の
巨大な観念形態・えぐられた内臓を更迭の車が疾走する。重圧な
建築叢の下・落盤の圧死体や酷使の版死人を塗り潰した燐光を
放つ混疑土(コンクリート)の隧壁に沿うて地下鉄(メトロ)は
唸りのたうつてゐる。やがて都市全体が震動し躍動するだらう。



睡眠の内側で泥炭層が燃え始める。 「泥」(昭和11年刊『稗史伝』)


無燈の船が入港(はい)る、北十字(キグヌス)を捜りながら。

磁極三〇度斜角の新しい座標系に、古代緑地の巨象が現れてくる。

紛(なく)したサンタ・マリヤ号の古い設計図。
  「白鳥」(昭和23年刊『未来者』)


かっこいいフレーズのつるべ打ちである。
「磁極三〇度斜角の新しい座標系」に現れてくる「古代緑地の巨象」を夢想するだけで興奮するではないか。
地下鉄サムならずとも影響を受けてしまいそうだ。


↑『川の光2』参考図書として、ご興味をもたれた方はぜひご一読を。



  1. 2012/05/24(木) 22:50:51|
  2. 川の光
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アジアゾウを見た日

動物は好きなのに、動物園が苦手だ。
昔はけっこう喜んで旅先の動物園を訪れてたりしていたのだけれど、
タミーと暮らし始めたころから、だんだん動物園の動物を見るのが辛くなってきた。
ちなみに、映画における動物の酷使・虐待描写を受け付けなくなってしまったのもこのころから。
アメリカ映画では必ず最後に「この映画では動物は虐待されてません」とお約束でクレジットされているが、
“本当に~?”と疑ってしまうし、たとえアニマトロニクスであれCGであれ、駄目なものは駄目。
そのせいで、スピルバーグの『戦火の馬』もいまだに見ていない始末である。

いまでは、動物園に関しては、新明解国語辞典第4版の以下の定義に全面的に賛成している。

どうぶつえん【動物園】 生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、
捕らえて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀なくし、
飼い殺しにする、人間中心の施設。

(↑あまりにも個性的な定義のためか、その後の版では改訂されているらしい)

前置きが長くなってしまったが、そういうわけで、動物を見るなら野生動物ウォッチングがベスト、
なかでもおすすめはスリランカ! という旅の思い出話である。 



ここは、数年前に旅行したスリランカ北部のミネリヤ国立公園。
毎年8月~9月の乾季になるとアジアゾウが集結して、広大な貯水池の周辺の草を食べにくる。

我々はたまたまこの時期にこの地方を旅していて、国立公園のサファリツアーがあることを知り、
予備知識なしに参加した。ホテルに迎えに来たジープに揺られること30分で公園に到着。
しかし公園に入ってからも30分ほどは森と草原が広がっているだけで何も起こらない。
「こりゃ、何も見られないで終わるかも」とがっかりしかけていたら、いきなり前方に象の群れが出現した。

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こんなに間近に野生動物を見るのは初めてだったので、口をあんぐり開けて、しばらく茫然としてしまった。
群れをよく見ると、お父さんゾウ、お母さんゾウ、子供ゾウ、若者ゾウなど、いろんなタイプがいる。
鼻を左右に勢いよく振っては草をちぎり取り、無心にもぐもぐもぐもぐ食べ続けている。
夕暮れの草原は静まり返っていて、ゾウが鼻を振る「シュッ、シュッ、シュッ」というリズミカルな音だけが聞こえる。

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息をひそめて見つめていたら、一頭の若者ゾウが、「ん~?おまいらなんだ~?」と
やや怒気を含んだ感じでジープに近寄ってきた。あわや襲撃か? と一同恐怖におののいたのだが、
ガイドさんが履いていたサンダルの片方を投げてゾウの注意をそらし、事なきを得た。

こういう群れが、いくつも広大な公園をさまよっている。アジアゾウはアフリカゾウに比べて耳が小さいので
体温調節がしにくく、暑さに弱いため、昼間は森で涼んでいて、夕方になると草を食べに出てくるのだとか。
その数、総勢200頭以上。

どこまでも広がる空と草原、そしてゾウたちが平和に草を食む光景は、なんとも強烈かつポジティブな体験で、
この日ゾウたちをバックにガイドさんが撮ってくれた写真の夫と私は、異様なほどハイな顔つきで、目がランランと輝いている。

あとで知ったのだが、ミネリヤ国立公園のサファリはロンリー・プラネットが選ぶ「世界10大野生動物スペクタクル」
にも選ばれていて、近年はスリランカ観光の目玉のひとつになりつつあるそうだ。

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なお、スリランカはゾウ以外にも動物が豊富である。
ホテルの周辺がサルのたまり場になっているので、うっかり窓が開けられないほどだし、
いろんな種類のオオトカゲがそのへんをふつうに散歩している(コモドオオトカゲと違って無害らしい)。
仏教の生類憐みの精神が浸透しているので、野良犬が寺院にフリーパスで入れて
境内で群れをなして寝そべっていたりする。
動物好きの旅先としてぜひおすすめしたい。



  1. 2012/05/21(月) 22:13:09|
  2. 旅先の動物たち
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襲い来る雷神の恐怖



最近、タミーはそわそわと落ち着かない。
このところ天気が不安定で、それまで快晴だったかと思うと天にわかにかき曇り、
タミーが最も苦手とする雷がゴロゴロ鳴って、大雨が降ったりするからだ。

遠くの空で雷鳴が微かに響き始めると、タミーはいてもたってもいられなくなる。
目はうつろになり、背中はガクガク震え、恐怖のあまり半開きになった口からは涎が分泌する。
安住の場を求めて机の下に潜り込み、フローリングの床に穴を掘ろうとする。

↓恐怖の絶頂に達するとこういう状態に。
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「お母さん、ぼく、こわいよ、こわいんだよ…」
「ああ、あの空の上でゴロゴロいってる音ね」
「ぼく、あの音をきくと、不安で不安で…」
「あれはね、雷の神様が、雲に乗って視察にきてるんだよ」
「ええっ? かみなりのかみさまが?」
「ああやって“悪いゴールデンはいねえが~?”って、眼光鋭く探し回ってるわけ」
「かみさまは、なぜか東北弁なんだね?(←震撼している)」
「そして雷神さまは実は、雷よりもっと怖い武器をもってるんだよ。竜巻っていうの」
「たっ、たつまき…?」
「この前茨城のつくば市を襲った竜巻では、犬が小屋ごと飛ばされちゃったんだよ。ニュースでやってたでしょう」
「そうだったね…たしかワン太郎っていう名前の…」
「ワン太郎は幸い無事で、ケロっとして帰ってきたらしいけど、あの子はいい犬だから帰してもらえたんだよ」
「ぼく、いい犬になるよ!もう斜向かいに住んでるチワ太郎をからかったり、H公園の猫の餌を盗み食いしたりしないから!
だからかみさまおねがい!ぼくに目をつけないで早く帰ってください!(←絶叫)」

↓悪いゴールデンを物色中。
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しかし、ひとたび低気圧が去ると、さっきの誓いはすっかり忘れてしまい、
お父さんに撫でられながら「またあとでチワ太郎のやつをからかってやるかな…」などと思うタミーだった…。

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  1. 2012/05/18(金) 15:29:35|
  2. タミー
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猫の時間論



雨があがって、風が雲を吹き払い、からりと晴れた五月の朝。
朝食を済ませて中庭に出たハナちゃんが、テーブルの上にごろりと横になっている。

こんなとき、ハナちゃんは何を考えているのだろう。
復帰40年を迎えた沖縄における米軍基地問題が、一向に進展しないことを憂えているのか。
それとも、フランス大統領選の結果がユーロ圏の経済危機に及ぼす影響を見極めようとしているのか。
あるいはひょっとして、先日、飼われていた家から脱走した後、すらすらと住所を唱えて帰宅した、
例のインコのことでも考えているのだろうか。

「その弛緩した様子から推測するに、何も考えてない可能性もあるよね?」
「ふにゃ~ぁ~あ~(←欠伸しながら返事するとこうなる)いまあたしは“時間”について考えてるの」
「ははあ…“時間”はお父さんの最終講義のテーマだったしね」
「そうね、あの最終講義では、近代的な時間システムの起源は、ダーウィンの進化論に登場する
“人類の想像をはるかに超えた長い長い時間”ではないか、という興味深い考察がなされていたわけだけど」
「そういえば、とくに震災以後、哲学者や思想家が語る“時間”のスケールがやたらと大きくなってる気がする…」
「東浩紀さんも、『atプラス』最新号の対談で、“10万年なんて地球の歴史からしたら一瞬じゃないか”
という立場はありえる…と指摘してるわ」
「10万後に人類が生き残ってるかどうか、わからないしなあ…」
「最近もうひとつ興味深かった対談は『2千年紀の社会と思想』なんだけど」
「見田宗介さんと大澤真幸さんの対談集ね」
「見田先生によると、いま人類は生物の環境が臨界に達する“大爆発期”の最終局面にいるんですって」
「ここで失敗すると、滅びちゃうってことね」
「ところで、アラン・ワイズマンの『人類が消えた世界』によると、人類が滅亡すると犬も滅亡するけど、
猫は小動物を狩りながら自由を満喫するんですって」
「もしかして…また人類に対する猫族の優越性が証明されちゃった…の?」
「まあ、そうともいえるわね…」

そしてハナちゃんは、お父さんに喉をウリウリしてもらいながら、
テーブルの上で優雅に伸びをしてみせるのだった…。

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「ふにゃ、ふにぁあああああ~ん」




  1. 2012/05/16(水) 22:50:16|
  2. ハナちゃん
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犬本の最高峰『マールのドア』

『川の光2』が、渋谷のネズミたちから再びビス丸のエピソードに戻った。
ジャーマンシェパードのビス丸は、文字通り後ろ髪を引かれる思いで、
自分を救ってくれた少年に別れを告げて、救援部隊に合流しようとしている。
ビス丸はこの少年に、これまで誰にも感じたことがないような強い愛情を抱き始めているようだ。

犬を飼い始めてわかったことだが、犬という動物は、人間ととても深い関係を結ぶことができる。
それは他のどんな動物とも違う、特別な関係だ。
犬は人間を観察し、視線を追い、指さす方向に注意を向け、人間と気持ちを通わせる。
飼い主が喜ぶと、犬もうれしくなる。そして飼い主を喜ばせようとして、いろんなことを学習していく。

テッド・ケラソテの『マールのドア 大自然で暮らしたぼくと犬』(河出書房新社)は、
そんな犬と人間の深い関係を記録した、犬をめぐるノンフィクションの最高傑作である。
これまでフィクション、ノンフィクションを問わず、犬の本をいろいろ読んできたけれど、
これを超える作品にはまだ出会えていないように思う。



ネイチャーライターである著者は、ラフティングのために訪れたユタ州の川で、黄金色の迷い犬と出会う。
生後10~11か月、まだ成犬になっていない犬は、おそらくラブラドール・レトリバーとゴールデン・レトリバーのミックスで、
著者に会うまではひとりで過酷な砂漠での生活を生き抜いてきたらしい。
著者は彼に「マール」という名前を与え、ワイオミングの大自然のなかで一緒に暮らし始める。
家には犬用のドアをつけ、マールはそこを自由に出入りして、近隣の村で「犬の村長さん」と呼ばれるようになる。
狩り、スキー、登山など、どこにでもマールはついてきて、飼い主と犬は深い絆で結ばれていく。
マールの考えは人間の言葉で表現されるが、単なる擬人化を超えて、
著者が本能的に理解した犬の気持ちを、ダイレクトに言葉に置き換えた感じだ。

動物学者のテンプル・グランディンは、犬が幸福に暮らすためには
飼い主がいて、自由に野外で過ごせるような生活が望ましいと言っている。
簡単なようだが、たとえば現代の日本で可能かどうか考えてみると、実現はかなり難しい。
それを100%実現しているのが、この本の著者と飼い犬のマールなのだ。

年齢を重ねるにつれて、マールは体のあちこちに不具合をかかえるようになり、14歳で天寿を全うする。
そのいきさつを描いた最後の数十ページは涙なしには読めないのだが、
読後に残るのは、大自然のなか自由に駆け回り、飼い主に変わらぬ愛情を注ぐ、賢く美しい犬の姿だ。

タミーとは、一度だけ、一緒に山でキャンプをしたことがあるのだが、
誰に言われたわけでもないのにテントの周りで見張りを始めたりして、すっかりりりしい犬に変身していた。
最近はメタボ疑惑犬だが、活を入れるためにも、またアウトドアに挑戦したいものである。

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「ぼく、山歩きはとくいだよ!」



  1. 2012/05/14(月) 23:33:21|
  2. 動物の本
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京都に弾丸ツアー

一泊二日で京都に旅行してきた。
半年に一回くらいの割合で、発作的に京都に行きたくなる。
最近は、桜や紅葉で混み合う時期を避けて出かけることが多い。

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細見美術館で「酒井抱一と江戸琳派」展を見てから、夕暮れの鴨川の河原で一服。
さすがに観光客は一段落という感じ。サイクリングを楽しむ人あり、ベンチで語らう人あり。
タミーをここで遊ばせたら、大喜びで駆け回ることだろう。はしゃぎすぎて顰蹙をかうかもしれないが。
犬連れでこの河原を散歩する愛犬家も多いとか(京都在住の花村萬月さん談)。

今回の宿は俵屋。偶然にも中村好文さんが『意中の建築』で推薦している
「竹泉の間」に泊まることができた。
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玄関奥の坪庭には純白の藤が。
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翌日の朝は少し雨がぱらついたが、お昼前から快晴に。
新緑の東福寺を散策しに出かける。
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重森三玲の方丈庭園。
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昭和を代表する作庭家で、モダンな枯山水で知られる重森三玲。
調べているうちに、三玲という名前は画家のミレーからとったことがわかった。
彼は自分の子供たちにも同じ趣向の命名をしていて、長男は完途(カント)、次男は弘淹(コーエン)、
長女は由郷(ユーゴー)、三男は埶氐(ゲーテ)、四男は貝崙(バイロン)なんだそう。
こんな名前をつけられたら、子供としてはちょっと迷惑かもね、と思っていたら案の定、
長男は父に反発して、自分の子供には古事記や万葉集に由来する名前をつけたらしい。
しかし、それはそれでまた迷惑ではないか、という疑惑も。

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まあ重森の庭はどれもカッコいいので、子供や孫の名前はどうでもいいのですがね、
などと呟きながら、チッチ&タータを記念撮影。観光客が少ない時期にだけ可能なワザ。

ちなみに、こういうとき、夫が撮影を見とがめられたらするつもりの言い訳:
「気の毒に、彼女は頭が少しおかしくなっていて、どこにでもあのネズミたちを連れ歩いて、
写真を撮らずにはいられないんです。勘弁してやってください…」

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『マディソン郡の橋』みたいな屋根付きの橋を渡って泉涌寺方向へ。

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泉涌寺は大門が高い位置にあり、本堂へ参道を下っていく珍しいタイプのお寺。

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御座所の美しい庭園にも、恐れ多くもチッチ&タータが出現。
そのうち「川の光番外編 東山三十六峰の巻」なんてどうだろうか。

帰宅後、シッターさん宅に一泊していたタミーを
錦市場で購入した「犬用おからクッキー」で慰撫しようと試みるも、なんとなく不満顔。
今度は一緒に行けるといいね。
ただ、京都には犬が泊まれる宿がほとんどないのが悩みの種。
嵐山あたりに犬宿が誕生したら、けっこう人気を集めると思うのだが。
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  1. 2012/05/10(木) 20:51:13|
  2. 日記
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華麗なる転身?

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連休中、朝日新聞の「be」を読んでいたら、「最近東大から流出した有名教授」として、
御厨貴先生や上野千鶴子先生と並んで、いきなり夫の写真が掲載されていて驚いた。
そういえば先日、朝日の記者さんが拙宅にいらして、取材されていたのを思い出した。
こういう形で記事になったとは知らなかった。

ところで、この“流出した元教授”には、華麗な転身願望があるのをご存知だろうか。

●その① 映画俳優デビュー

「一度でいいから、ギャング映画や犯罪サスペンス映画に登場する“巨悪”を演じてみたいんだよね…」

(『007』シリーズで、ペルシャ猫を撫でながら邪悪なプランを練る、あの人のことだろうか?
“冷酷なヤクザの会計士”的な役なら、けっこう似合うかもしれない。
「あいつ、ああ見えて、大学で表象文化とやらの勉強してたらしいぜ…」)

●その② ラジオのDJになる

「こんばんは、今夜も素敵な音楽と詩をお届けしましょう…とソフトな声でリスナーに語りかけながら、
好きなジャズのナンバーをかけたり、詩を朗読したりするのはどうかなあ」

(おそらく、作家の絲山秋子さんがFMのパーソナリティで人気を博していると知り、
刺激を受けたのではないかと思われる)

●その③ TV番組のレポーターになる

「『吉田類の酒場放浪記』みたいな番組で、東京の下町を散歩したり、
酒場を飲み歩いたりできたら楽しいだろうなあ…」

(そりゃあ、吉田さんはいつもとっても楽しそうだけど、人知れぬ苦労もいろいろあるのでは…?)

以上、いずれも実現する見込みが絶望的なまでに薄い、無謀な願望ばかりだが、
万が一、彼を起用してみようと思われる奇特な監督・プロデューサーの方がいらしたら、
ご連絡をお待ち申し上げております。

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「前途多難ね…」




  1. 2012/05/07(月) 22:08:52|
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猿と人間のあいだ

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三軒茶屋のシアタートラムで5月2~6日に公演が行われた『カフカの猿』を見た。
カフカの短編「ある学会報告」を翻案した、キャサリン・ハンターの一人芝居である。

「ある学会報告」は、一匹の猿が、自分はいかにして猿から人間になったか、講演で報告する形式で書かれている。
ピーターと名乗るこの猿は、アフリカの黄金海岸で捕えられ、船で移送される間に必死に人間を観察してその物真似をし、
言葉を学ぶことで生き延び、いまでは見世物小屋のスターとして、人間と変わらない暮らしをしているのだ。
多和田葉子の『雪の練習生』にも影響を与えていると思われるこのカフカのテキストが
いったいどのように舞台化されるのか、興味津々だったが、キャサリンが登場した瞬間から
一気に芝居の世界に引き込まれ、最後まで固唾をのんで見守ることになった。

ぱっと見には小柄な人間なのに、よく観察すると、しぐさも態度もどこかおかしい…
「人間になった猿」という奇怪な存在が、そのまま目の前にいる感じ。
自由自在に動く長い腕、猛スピードで梯子を駆け上る驚異的な身体能力。
所作のひとつひとつに、人間ならざる生き物がもつ違和感が仕掛けられている。

テキストはほぼ原作通りだったが、ラストに付け加えられたいくつかのセリフで、
原作では暗示に止まっている人間性に対する告発が、より鮮明に打ち出されていた。

「猿」は、見る人によってさまざまに置き換え可能だと思う。
これを西欧文明によって植民地化されたアフリカやアジアをめぐる寓話と捉えることも、
男性社会における女性、白人社会における有色人種など、マイノリティのあり方を重ね合わせることもできるだろう。

しかし何はともあれ、人間を相対化する存在としての“動物”をここまで見事に身体化してみせた
キャサリン・ハンターという女優さんは凄いの一言である。
久しぶりに一流の俳優による名舞台を見て、すっかり満足した連休の一日だった。


  1. 2012/05/06(日) 23:43:42|
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地下鉄サムの元ネタ発見

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連休だというのに、朝から大雨が降っている。

タミーは近所の公園で、制止を振り切って水たまりにスライディングし、
得意技のひとつ「いい湯だな」を披露して、全身泥まみれになり、帰宅後バスルームに直行。
その後、はしゃぎまわってくたびれたらしく、ソファでハナちゃんと二度寝している。
気楽でいいな動物は…とため息をつきたくなるのはこんな時である。

今朝の『川の光2』では、「サム」と称する婆さんネズミの妖術(実は催眠術?)にかかって
チッチとタータがもがき苦しんでいると、土の壁を破って、突然、正体不明の動物が出現した。

「広がった穴の入り口から、何か大きな薄茶色の動物がぬうっと突き出している。
顔かたちはネズミに似ているが、ただ、なにしろ大きい。
その頭部は人間の子どもの丸めたこぶしくらいもある。」

ううむ、この動物はいったい? もしかしてこれが本物の「地下鉄サム」なのか?

このところ『川の光2』の読者に会うたびに必ず「あの婆さんネズミは、本当にサムなんですか?」と聞かれてきたし、
私自身も、名前のイメージからしてなんだか偽物くさい、と疑ってはいた。
この婆さんネズミには、「サム」より「お竜」とか「お熊」のほうが似合いそうではないか。

ねえねえ、この大きい動物が本物のサムなんだよね? ね? ね? としつこく問いただしてみたが、
最近、ネタバレされるのを恐れてすっかり秘密主義になってしまった夫は
「フッフッフッ…」と余裕の含み笑いをするだけで何も教えてくれないのだった。
真相は明日を待つしかない…。

ところで、地下鉄サムには、元ネタがあったのをご存知だろうか。

先日、書庫を整理していたら、こんな本↓を発見した。

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ジョンストン・マッカレー作、乾信一郎訳『地下鉄サム』。
1959年初版、1960年5版の創元推理文庫。なんと定価70円。

訳者のあとがきによると、戦前、アメリカの“The Detective Story Magazine”という
パルプ・フィクション誌に連載されたシリーズらしく、読んでみると、粋なコント集のような感じだった。

主な登場人物は、ニューヨークの地下鉄をなわばりにしているスリのサムと、名探偵クラドック。
二人はトムとジェリー、ロードランナーとコヨーテ、またはルパン三世と銭形警部のような関係で、
軽口を叩きあう一種の友達でありがなら、毎回、追いつ追われつの捕物を繰り広げる。
そしていつものように、サムは巧みに探偵の罠をかわして逃げおおせる…というパターンだ。

特徴的なのは、ちゃきちゃきの江戸弁で翻訳されていること。たとえばこんな感じ。

「これはクラドックのだんな、またぞろここで、
だんなのまずいつらをきょうもおがませられるんですかい?」
「まずいのはお互いさまだろうぜ」
「きょうもまたひなたぼっことは恐れいりやしたな。ニューヨーク市なんてもなあ、
ひなたほっこをしてりゃお役人様に給料を払うんですかね?」
「おれがな、ニューヨーク市から給料を貰っているのは、
きさまみたいなよくねえ野郎をふんづかまえるためだ。知らざあよく覚えときな」

アップタウンは「山ノ手」、刑務所は「川上の石造りの別荘」、スリは「抜き屋」と訳されていて、
サムは「なにを言ってやんでえ! べらぼうめ!」なんて啖呵を切る。
脇役のネーミングも「鼻のムーア」「めかし屋のノエル」「高架線のエルマ」
「南京豆のピート」といった具合で、なんとも活きがよく愉快な読み物なのだ。

tham02

原文もちゃきちゃきのニューヨーク下町言葉で書かれているらしく、
タイトルのスペルは“Subway Sam”ではなく、ニューヨーク下町訛りをそのまま綴って“Thabway Tham”。

「ねえねえ、これが元ネタでしょ!」と夫に報告すると
「もちろんそうだよ、知らなかった~?」とあっさり返され、不勉強を反省した次第。
なにしろ夫は開成中学時代に推理小説研究会に所属していた、筋金入りの創元推理文庫の読者なのだ。
(彼は『火星のプリンセス』や『レンズマン』などのSFシリーズの熱狂的なファンでもあり、
『火星~』を映画化した『ジョン・カーター』には大きな期待をかけていたのだが、
見てみたら、“絶世の美女”という設定の火星のお姫様を演じた女優さんが若いころの八代亜紀に似ていて
「僕のデジャー・ソリスはあんな女じゃない…」とがっかりしていた)

『地下鉄サム』は現在は絶版だが、アマゾンなどで古本が入手可能。
地下鉄サム (創元推理文庫 126-1)


  1. 2012/05/03(木) 11:27:36|
  2. 川の光
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