川の光日記

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3月の終わりに

チェス祭りが大興奮のうちに終わった。
そして本日をもって、夫は大学を離れてフリーの身となった。
私も昨年の夏に会社員を辞めているので、
今後は犬・猫・妻が、夫の“筆一本”に頼って生きていくことになる。

↓これからはお父さんが家に毎日いるんだって!と喜び駆け回るタミー。
inu

通常よりひと足早く、大学や会社からリタイアしてしまった私たち。
いまのところ特に何も心配せず、動物たちと呑気に暮らしているわけだが、
最近のベストセラーのタイトルを眺めていると、若干の不安を覚えないでもない。

今後の日本社会を生き抜くには、“下山の思想”を会得する必要がある一方、
私たちを待ち受けるのは厳しい“坂の上の坂”であり、
とはいえ努力次第では“50歳を越えても30代に見える”ことは可能で、
“人生100年計画の行程表”を描くことだってできてしまうらしいのだ。

行程表…なんだか考えるだけで疲れるわ…と脱力していたところ、
そんな疲労感を一瞬で吹き飛ばしてくれる本に出合った。

熊谷守一の『へたも絵のうち』(平凡社ライブラリー)である。
1977年に97歳で亡くなった画家が、91歳のときに自分の生活と生い立ちを語った一冊だ。



熊谷守一は、現在は美術館になっている豊島区千早町の家に昭和7年、52歳のときに越してきたのだが、
それ以降、正門から外に出たことがない(一度だけ、垣根づたいに勝手口まで散歩したことがあるらしい)。
日々の生活はこの数十年ほとんど変わらない。朝6時ごろ目を覚まし、朝食を取った後、
きざみタバコを吸いながら、妻が鳥の世話を終えるのを待つ。
そのあと、二人で碁を打つ。昼すぎから夕方までは昼寝をする。
夜になると絵を描き、書を書く。

「私は誰が相手してくれなくとも、石ころ一つとでも十分暮らせます。
 石ころをじっとながめているだけで、何日も何月も暮らせます。」

絵に関しても、異様に肩の力が抜けている。

「絵なんてものは、やっているときはけっこうむずかしいが、でき上がったものは大概アホらしい。
 どんな価値があるのかと思います。しかし人間は、その価値を信じようとする。
 あんなものを信じなければならぬとは、人間はかわいそうなものです。」

巻頭のモノクロの肖像写真(肩に小鳥がとまっている)の顔立ちが、びっくりするくらい美しい。
生い立ち編を読むと、山あり谷ありのボヘミアン的な人生だったことがわかるが、
貧乏から戦争まで、どんな出来事にも、いつも変わらぬ態度で飄々と対処している。

「これからもどんどん生き続けて、自分の好きなことをやっていくつもりです。」

“坂の上の坂”を前に不安を感じている方に、ぜひこの超俗パワーをお勧めしたい。
私は近々、作品をじっくり見るため、豊島区の美術館を訪問しようと計画中である。

neko01
↑3月末日、「小島慶子キラ☆キラ」の最終回を聞きながらまどろむハナちゃん(ラジオ好き)。


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  1. 2012/03/31(土) 19:25:14|
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夫です。チェス・イベントについて一言。

こんばんは。
またしてもお邪魔しております。夫です。日頃、家内のブログをご愛読くださいまして
どうも有難うございます。

家内が3月28日のチェス・イベントについてリポートしてくれましたので、
当事者の立場から多少補わせていただきます。

実は、前々日の26日に、チェルニン師は、世話役のジャック・ピノーさんともども
西日暮里の開成学園を訪れ、そこに集まった中学生・高校生相手に
レクチャーとエキジビション対局をやってくれました。わたしは開成の卒業生という縁で
その催しにも呼ばれ、対戦チームの指揮をとるというような役回りを
務めさせてもらいました(もちろんあっさり負けましたが)。
羽生善治先生がチェルニンさんを恵比寿のホテルから西日暮里まで連れてきてくれたのですが、
単なるエスコート役を気持ち良く引き受けて、子どもたちに混ざって気取らずに
にこにこしている羽生先生も、つくづく偉い方だと思いました。
久しぶりの母校訪問はわたしにはなかなか楽しく、帰り道、開成の中学と高校との間にある坂を
ゆっくりのぼって田端駅まで歩きながら、ある感慨がありました。が、それはまあ別の話です。
街並みはすっかり様変わりしても、当然ながら地形は変わらないのですね。

さて、28日の日仏学院での同時対局ですが、これもまた、
最初から予想されていたようにころりと負かされました。
以下、わたしのゲームの棋譜を辿りつつ、少々の説明を加えます。

Chernin, A.-Matsuura, H.
Grand Master Chernin's Simul, at Nichihutsu-Gakuin, Tokyo, 28/03/2012
1.c4 g6
こうした「多面指し」のエキジビションでは、一人で立ち向かう側が白を持つことになっています。
つまりGMチェルニンは先手番の白、わたしは後手番の黒ということになります。
従って、戦型の指定はこちらからはしにくく、とにかくGMの初手を待つほかありません。
初手c4はいわゆるイングリッシュ・オープニングで、わたしはやや安堵しました。というのも
GMはc4が好きなはずとピノーさんから聞いていて、実は事前にイングリッシュ・オープニングを
多少研究してきたからです。GMは隣席の慶応の小澤太郎教授にはd4を指し、
わたしの前に来て、多少ためらったうえでc4を指してきました。
彼の気紛れによる偶然ですが、わたしは内心しめしめと思ったのです。
2.Nc3 Nf6
3.e4 d6
4.d4 Bd7?
ところが、黒の4手目のこの4....Bd7?が、すでに疑問手なのでした!
後になってchessgames.comのデータベースを見てみると、白の4.d4まで進んで
同一局面になった棋譜が1309局載っていますが、黒の次の手が4....Bd7?となるのは
一局もありません。少なくともメインラインにはありません。ここは4....e5と突っ張るか、
4....Bg7とおとなしくキング側のビショップを上がっておくか、そのどちらかでした。
GMはわたしこの気弱な4....Bd7?を見て、キングズ・インディアン戦法のヴァリエーションの一つ、
「フォー・ポーン・アタック」で潰せると踏み、5.f4以下、嵩にかかって力ずくで攻めてきました。
これは当方のまったく不案内な定石です。
5.f4 Bg7
わざわざg7を空けた以上、ここにビショップを上がるしかありませんが、
この後、黒はすべて一手ずつ遅れる展開に。
6.e5 Bg4?
e5のポーンをとると最終的にはクイーンの交換になり、黒のキングで白のクイーンをとることになるので、
黒はキャスリングの権利を失います(4手目で4....e5をやれなかったのも同じ理由)。
そこでわたしは6....Bg4で強引にビショップをさばきに行ったのですが……。
7.Qb3 dxe5
この7.Qb3で、6....Bg4はあっさり空を切ることに。
chess01
8.dxe5 Nfd7
結局ナイトはすごすごと、無力な位置まで後退。
9.Be3 b6
9....b6はクイーンがb7地点に侵入するのをふせいだ手ですが、これも消極的な緩手でした。
こんなことをしている暇はなかったのです。ポーンを一個くらいくれてやっても構わなかったので、
むしろその代償として反撃の時間を稼ぐべきでした。
10.h3 Bf5
以下、ビショップが追われつづけて、惨めな後退を繰り返します。
11.Rd1 Nc6
白はクイーン側へキャスリングができない(黒のf5のビショップが利いている)ので、
強引にルークをd1に持ってきました。しかし、このピンの効果は、
その強引さのデメリットを償ってあまりあるものです。黒のナイトとクイーンは
縫い留められて硬直状態と化しました。とはいえ、こうした強攻の代償として、
白のキングサイドは極端に展開が遅れています(上の写真をご覧ください)。
その点を咎められればまだまだけっこう互角のはずだ、とわたしはこの時点では考えていました。
ところが、黒にはその方策を実行する余裕を与えてもらえません。
12.g4 Be6 
このビショップだけ無駄に4回も動かされる始末。
13.Nf3 Qc8
またしても1手のロスですが、d1のルークによるピンはどうしても
外しておく必要があるので、やむをえません。
14.Ng5 Nc5
15.Bxc5 bxc5
この交換でbファイルが開いたのは黒のメリットです。これでいつでもRb8で白のクイーンを
攻撃する権利を得ました。またナイトとビショップの交換は、ポイント的にも黒がやや得。
16.Nxe6 Qxe6
悪夢のような自軍のビショップを始末するのと引き換えに、クイーンがここに出られたわけで、
わたしは内心、ここではかなり持ち直したのではないかと思っていました。
しかし、白がキングズ・インディアンの形を決める次のBg2(キング側のビショップがここに
上がる戦法をキングズ・インディアンと呼びます)が、まさにこのもっとも効果的な瞬間に来ました。
17.Bg2 0-0?
ナイトでなければa8のルークがとられてしまいます。またしても、きわめて効果的なピン。
かつ、d1の白ルークがまるまる貫通しているのが恐ろしい。わたしはともかく
キャスリングによってa8のルークを守っておかざるをえない(それによってキングが
d1の白ルークから離れて安全にもなる)と考えたのですが、ここはむしろ17....g5で、
g6にクイーンの逃げ場所を作っておくべきだったかもしれません。というのも……。
18.Bd5 Rab8
愚かなことに、この18.Bd5がまったく見えていなかったのです!
GMが近づいてきてすぐ隣に来た瞬間に見えて、ああ、と頭を抱えましたが、もう遅い。
もはやクイーンの行き場所がありません。そこで、18....Rab8。
これは黒の最後の勝負手、というか、もはやこれしかありません。
19.Bxe6 Rxb3
20.axb3 fxe6
クイーン交換に続いて、ビショップとルークの交換になります。その戦力差でもはや、勝負あり。
とはいえ、fファイルがf9のルークのために開きました。ここでまだしも、
このルークがf4の白のポーンをとりつつ進出できさえすれば、
辛うじてバランスがとれていたかもしれません。しかし……。
21.0-0 Nd4
白はこの絶好のタイミングでキャスリング。自動的にf1のルークがf4のポーンを守ることになり、
黒のf9のルークは前進できません。ルークとビショップの戦力差に加えて、
ポジショナルな意味でも盤面上で白が黒を抑え込んでいます。
この後はもはや将棋で言うところの「形作り」でしかなく、実質上はもう白の勝ちが決定しています。
プロ同士の対戦ならここで黒は投了しているでしょう。
22.b4 cxb4
23.Rxd4 bxc3
24.bxc3 g5
役立たずのルークを始末して、キングを進出させて戦おうという最後の試み。
ここでルーク交換をせずに他に何か抵抗しようがあったか? なかったでしょうね……。
25.fxg5 Rxf1+
chess04
26.Kxf1 Bxe5
27.Rd8+ Kf7
28.Ra8 a5
29.Rxa5 Bxc3
黒のビショップがポーンをとる手が白のルークに当たります。
しかし、こんな小技はもはや何の役にも立ちません。
30.Rc5 Bd4
31.Rxc7 e5
chess05
32.Ke2 Ke6
白のキングまで戦列に参加してきました。黒のキングは何とかe6までは出ましたが、
白のポーンが絶妙な形で両翼に残っているので、これ以上は前進できません。
33.Kd3 Kd6
34.Rc8 Bf2
35.Ke4 e6
白のキングはついにe4まで来て、黒のポーンの前進を完全に封殺。
36.Rh8 Bh4
せめてあともう一個だけでもと思い、白のポーンをとりにいきますが、空しいだけ。
37.Rxh7 Bxg5
38.h4 1-0
このダブルポーンの前進はもはや阻めないので、黒の投了もやむなし。

終わってから、「けっこう良い勝負でしたね」などと心優しいピノーさんが慰めの言葉を
かけてくれましたが、少しチェスが強い方から見れば、まるっきり情けないゲームとしか
映らないことは重々承知しています。すでに4手目で間違えているわけで、
しかしまあ、ここを切り抜けたとしても、あっという間に潰されるという結果は
どっちみち変わらなかったことでしょう。GM畏るべし!

家内は「8番目に負けた」とか書いてくれましたが、強い人同士のゲームでは、
勝負の帰趨が双方にとってはっきりした瞬間にそこで終わりになります。
わたしはただ、未練がましく無駄に粘ってみただけです。
こうして、わたしの晴れ舞台の日は終わりました。まあ、わたしの知力はこの程度のものです。
この棋譜を一生の記念として、あとは静かな余生をおくることにします……。
しかし、本当に楽しい体験でした。不意に春めいたぽかぽか陽気になった、すばらしい快晴の一日でした。
声をかけてくださった羽生先生、
お膳立てしてくださったピノーさん(長らく絶版になっている『ジャック・ピノーのダイナミック
チェス入門』は愉楽に満ちた名著です。新版を出してくれる出版社がどこかないものでしょうか)、
そしてもちろん、わたしなどを相手にチェスを指してくださったアレクサンダー・チェルニン師──
皆さんに心からお礼を申し上げます。
  1. 2012/03/30(金) 23:11:40|
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チェスの神と対局した日

夫がウクライナ出身のチェスのグランドマスター、アレクサンダー・チェルニン氏と
一戦を交える記念すべき日がついにやってきたので、いそいそと観戦に出かけた。

とはいえ、もちろん一対一ではなく、夫を含む15人を相手に、
チェルニン氏がこんな状態↓で“多面差し”をするわけなのだが。

chess02

会場となった日仏学院の2階廊下に15人分のチェスセットが一列に並べられ、
チェルニン氏が一巡してまた戻ってくる。その間、平均わずか8~10分。一人にかける時間は平均30~40秒。
すべての盤面と進行状況を把握しつつ、コンピュータ付ブルドーザー(←古い比喩で恐縮です)のごとく動き回る。

ちなみに参加した15名のうち、9名は日本チャンピオンクラス。
残り6名はゲストで、夫のほか、ギリシャ大使、ベルギー公使、北尾まどか女流初段など。
オブザーバーのなかには将棋の森内俊之名人の姿もあった。

chess03
↑精悍な猛禽類のような雰囲気を漂わせたチェルニン氏。

chess01
↑試合開始後30分ほど経過した時点の夫の盤面。

そして結果は…残念ながら夫は38手で投了。
しかし8番目くらいの投了だったので、なかなか健闘したとはいえるのではないだろうか。
以下が棋譜(私には暗号としか思えないのだった…)

Chernin, A.-Matsuura, H.
Grand Master Chernin's Simul, at Nichihutsu-Gakuin, Tokyo, 28/03/2012
1.c4 g6 2.Nc3 Nf6 3.e4 d6 4.d4 Bd7 5.f4 Bg7 6.e5 Bg4 7.Qb3 dxe5 8.dxe5 Nfd7
9.Be3 b6 10.h3 Bf5 11.Rd1 Nc6 12.g4 Be6 13.Nf3 Qc8 14.Ng5 Nc5 15.Bxc5 bxc5
16.Nxe6 Qxe6 17.Bg2 0-0 18.Bd5 Rab8 19.Bxe6 Rxb3 20.axb3 fxe6 21.0-0 Nd4
22.b4 cxb4 23.Rxd4 bxc3 24.bxc3 g5 25.fxg5 Rxf1+ 26.Kxf1 Bxe5 27.Rd8+ Kf7
28.Ra8 a5 29.Rxa5 Bxc3 30.Rc5 Bd4 31.Rxc7 e5 32.Ke2 Ke6 33.Kd3 Kd6
34.Rc8 Bf2 35.Ke4 e6 36.Rh8 Bh4 37.Rxh7 Bxg5 38.h4 1-0

以下、夫の感想をアトランダムに。

・こっちの陣形の悪化を誘ういやらしい手ばかりを、よくも次から次へと指せるものだと感心した。
・もしかしたら最初から4手目あたりで、すでに敗北の種は蒔かれていたのかもしれない。
・最終的には、剛腕で、力ずくでねじ伏せられた感じ。為すすべなし、お手上げ。
・対局が決まってから1か月。この間、体力作りを怠ったことが悔やまれる。
・結局、世の中には、頭がとても良い人と、それほど良くない人がいるってことさ、フッ。
・しょせん人生とは、敗北の連続なのでしょうか。
・チェスが強いのがそんなに偉いことかい!

なんだか妙に肩を落としてがっくりしている。
どうやら「一生に一度の妙手を思いついて突然道がひらけ、奇跡の連続でついに引き分けに持ち込み、
松浦さんすごいじゃないですか!と皆が驚き称賛する」
というような甘い夢を一瞬だけ見ていたらしいのだが、それが無残にも打ち砕かれてしまったようだ。

数日中には本人が感想戦をアップすると言っているので、お楽しみに!


  1. 2012/03/29(木) 17:42:57|
  2. 日記
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白黒動物として生きる

neko

ハナちゃんが窓辺で考え込んでいる。

緊迫の度合を深める北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射問題に心を痛めているのか。
脱原発派の猫として、原発再稼働の動きを憂えているのか。
それとも、先日亡くなった吉本隆明氏が戦後日本思想に及ぼした影響について思いをめぐらしているのであろうか。

しかしよく聞いてみると、本日、こうした諸問題の何にも増してハナちゃんの頭を占めているのは
「人間はなぜパンダに甘いのか」問題なのだった。

「そういえば新聞でもTVでも“上野動物園のパンダ、繁殖のため厳戒態勢”って大々的に取り上げてるね」
「前から疑問なんだけど、なぜ人間はパンダとなるとこんなに大騒ぎするの?」
「やっぱり“かわいい”からなのでは?」
「パンダって、あの柄ゆきのおかげでずいぶん得をしてるわよね…」
「まあたしかに、白黒ツートーン柄じゃなかったらただのクマだよね。これほど手厚く保護されてないかもね」
「その自慢の白黒模様だけど、猫みたいに毛づくろいしないから、よく見ると白の部分がけっこう汚れてるのよね…」
「でもハナちゃん、動物界のスーパースターをやっかんでも仕方がないと思うよ?」
「オスは発情すると、ヤギみたいに“メーメー”と鳴くんですって。そこもなんだか信用できないわ…」

どうやら、自分と同じ白黒柄でありながらあまりにも不公平、という思いがあるらしい。
しかし世の中、白黒ツートーンでパンダほど脚光を浴びない動物は山ほどいるではないか。
Z公園のキンクロハジロだって、パンダをやっかんだりしてないと思うよ、と懸命にとりなす私だった…。

↓キンクロハジロ(オス)。
ハナちゃんを連想させるため、私はZ公園の池の鳥のなかでいちばん好感をもっている。
200th02

余談だが、白黒動物で思い出した件。

最近文庫化されたジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』に、
なぜ馬は家畜化されたのにシマウマは家畜化されなかったのか? という問題が取り上げられている箇所がある。

その理由とは…「シマウマには、一度人間に噛みつくと絶対に離さないという不快な性質がある」から。

なぜかこの箇所がツボにはまってしまい、私はしばらく笑いが止まらなかった。
その不屈の意志ゆえに決して家畜化されなかったシマウマ。見上げた動物である。


  1. 2012/03/27(火) 14:58:36|
  2. ハナちゃん
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『川の光2』に見る東京の地形

『川の光2』が、記念すべき連載200回目を迎えた。
武蔵野を出発したタミー救出部隊は、なんとか渋谷までたどり着いたものの、繁華街の雑踏のなかで互いを見失い、
現在、マクダフは宮益坂の裏通りに、ビス丸は渋谷駅の北側のどこかに身を潜めている。
そしてチッチとタータは駅周辺の地下街で、怪しいドブネズミの集団に囚われの身に…。

動物たちはこれからどうなるのか? タミーは無事救出されるのか?すべては謎に包まれたままだ。
(実は、作者自身にもまだわかっていないことがいろいろあるらしい…と間近で観察している私は思う)

ところで、『川の光2』ウォッチャーとして私が最近ハマっているのが、東京の地形。
特にこの本↓に出合ってから、『川の光2』は地形を意識して読むとより面白いのでは?と考え始めた。



『東京の自然史』が描き出すのは、100万年前から現在に至る、東京の地形の変化である。
地殻変動、海水面の変化、噴火による火山灰や河川による砂礫の堆積、江戸時代の埋め立て…。
1000年に一回の大震災が実際に起きてしまい、日本列島が地震の活発期に入ったと言われる現在では、
100万年というスケールがある種のリアリティを感じさせるから不思議だ。

以下、私がこの本で学んだこと。

・東京は「武蔵野~山の手台地」と「下町低地」からなる。西高東低で、標高差は40m以上。
 台地は洪積層、低地は沖積層。
・台地と低地の境界線は、京浜東北線~山の手線の東側から少しだけ内側に入ったあたり。
 ただし山手線の内側の台地は、河川によって深い谷が刻まれ、起伏が激しい。
・台地の表土を形成する「関東ローム層」は、6万年~1万年前に堆積した富士山の火山灰。
・低地の沖積層の上部は柔らかい細砂と泥層で、建築物の支持力に乏しく、高層建築には不向き。
(東京スカイツリーは地下50メートルまで基礎杭を打ち込んでいるのでOKらしい)

あまりにもおおざっぱな要約ではあるが、上記の内容を頭に入れて『川の光2』の動物たちの行程を見直してみる。
動物たちは武蔵野台地を出発し、杉並~世田谷の山の手エリアを過ぎて、窪地になった渋谷までやってきた。
今後は山の手線の内側に進み、起伏に富んだ地形を抜けて東京タワーで集合して、隅田川の東側の低地に向かう。
(チッチとタータに関しては“地下鉄を使う”という手段も示唆されているが、犬たちは歩くしかないはず…)

堅固な西の台地から山の手へ、そして山あり谷ありの東京中心部を経て、地盤が不安定な海抜0メートル地帯へ…
背景となる場所がサスペンスフルな救出劇に呼応して物語を盛り上げる。
この道筋を思いついた作家としての勘に、我が夫ながら脱帽せずにはいられない。

ちなみに、これまで武蔵野で田舎ねずみのように引きこもり生活を送ってきた我々だが、
4月以降はロケハンのため東京の街に何度か繰り出す予定。
今後はその模様もリポートしていきたいと思う。

  1. 2012/03/24(土) 23:30:53|
  2. 川の光
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渋谷の地下世界

まもなく連載200回を迎えようとしている『川の光2』が、緊迫した展開になってきた。

渋谷のスクランブル交差点で仲間たちとはぐれたチッチとタータは、
地下鉄へと通じる階段を下りて構内をさまよっているうちに、
「渋竜会」のメンバーと名乗るネズミ暴力団の構成員に出会う。

under01
↑渋谷の地下世界への階段。

「渋竜会」を支配するのは、「ヒャッ、ヒャッ、ヒャッ」と気味の悪い声で笑う婆さんネズミ。
チッチとタータのこれまでのいきさつを聞いた怪しい婆さん組長はいう。
「ネズミ二匹を首にしがみつかせた犬が、あの交差点を渡る!
はっはあ! こんな面白い話はここんとこ、聞いたためしがないよ。
それでおまえたち、こんな地の底まで降りてきてしまって、途方に暮れているってわけかい」
(夫はこういう“闇の世界の住人”を描くとき、一段と筆が冴えるような気がする…)

渋谷の暴力団といえば、のちに俳優に転身した“インテリヤクザ”安藤昇の「安藤組」を思い出す。
愚連隊を母体に、1952年、渋谷宇田川町を根拠地に発足した安藤組は、1964年に解散。
暴力団の自主解散第一号として注目されたという。
溝口敦の『暴力団』(新潮新書)によると、最近の暴力団は法律に縛られ、資金難、人材難に苦しんでいるらしい。
「暴力団は構造不況業種で、もう行き着くところまで行き着いてしまった」と著者は見ている。
そんななか、地下ではネズミたちが着々と自分たちの悪の帝国を築いていたわけだ。


↑会費や積立金を納める義務があるうえ、本部に日用品を半強制的に買わされたり、
組長が「使用者責任」を問われるのを恐れて、ボコボコにされても復讐できなかったり、
いまどきのヤクザの切ない実態がよくわかる本。

ついでに、まったく違う角度から渋谷の地下を捉えた作品をご紹介。
畠山直哉の『Underground』(メディアファクトリー)は、
暗渠になっている渋谷川のトンネルに潜入して撮影した驚異的な写真集だ。
スクランブル交差点の直下も映し出されている(カバーに使われている写真)。



ender02

↑闇のなかに閉ざされた、「人間に対して徹底的に無関心な」もうひとつの自然。
黒ずんだ油膜が虹色に輝き、カビが神秘的な触手を伸ばす。
驚いたドブネズミやコウモリが逃げ去っていく。
私たちが日ごろ通り過ぎる繁華街のほんの数メートル下に、こんな暗黒が広がっているのだ。




  1. 2012/03/21(水) 23:30:17|
  2. 川の光
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誕生日来る

birthday01

地獄の確定申告もなんとか切り抜け、今日は夫の誕生日。
しかし彼の年齢ともなると、素直にハッピーな気分でもないらしく、
このところ毎年、以下のようなやりとりが繰り返される。

「お誕生日おめでとう!」
「全然めでたくないよ…取り返しのつかない時間が、また過ぎ去ってしまっただけさ…」
「何はともあれ、めでたい日じゃない!」
「いつのまにか、こんなに歳を取っちゃってなあ…」
「でもほら、毎年同じこと言っている気がするけど、誕生日って、年齢を祝うんじゃないと思うの」
「じゃあ、いったい何を祝うの?」
「“あなたがこの世に生まれてよかった”というお祝いなわけよ」
「僕なんか、この世に生まれて本当によかったのかなあ…」
「もちろんよかったよ! 読者もそう思ってるよ!」(←“犬が星見た”のポーズで)
「そのキラキラした犬っぽい目付きが、なんとなく信用できないんだよなあ…」
「それにとにかく、マラルメと同じ誕生日だなんてすごいよ!」
「そうかなあ…」
「本当だって!」
「じゃあ今晩は、トリのモモ焼きにしてくれる?」

そんなわけで夕飯は夫の好物のトリのモモ焼きで、今年も平和に過ぎていく誕生日だった…。

birthday02
↑なんとなく春めいてきたZ公園の池を悠然と泳ぐカモたち。

  1. 2012/03/18(日) 22:58:54|
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日向ぼっこの快楽

hirune01

明日からまた天気が崩れるらしいが、今日は風もおさまって、春先らしい爽やかな快晴だった。

こういう日には、洗濯カゴを下げて二階のルーフテラスに出ると、犬と猫もゾロゾロと跡をついてくる。
そしてそれぞれ思い思いの場所に陣取って、のんびり日向ぼっこを始める。
洗濯物を干し終えた私も、なんとはなしにそこに参加してしまう。
日を浴びながら頭をからっぽにして動物たちと共振するのは最高に気持ちがいい。
こうしているうちに動物化がいっそう進行するのではと、若干の危惧を覚えなくもないのだが。

「犬が寒風を避けて日向ぼつこをしてゐるのを見ると、
酒を飲んでゐるときの境地といふものに就て考へさせられる。」と書いたのは吉田健一である。

「犬は体中に日が当たつて、日光が毛を通して皮膚まで差してくるから、我が代の春を歌って
寝そべってゐる。さういふ時、犬を抱き上げて見ると解るが、日向ぼつこを暫くしてゐた後は、
肉まで温まって柔らかくなつてゐる。そしてそれを見てゐても、別にだらしがないといふ感じはしなくて、
ただ如何にも気持ちがよささうなだけである。」(「飲む話」)

犬が日光に身を任せているように、酒に体を預けるのが、酒飲みにとって最高の境地だ、と吉田健一はいう。
ヤケ酒や、そこにいない誰かの噂話を肴にする、等は、酒の楽しみを知らない愚か者による邪道な行いなのである。

思えばこれまでの人生、邪道な酒に無駄な時間を費やしてきた私ではあるが、
そして早朝の突然の揺れに眠りを破られ、不安にかられて消費期限5年のビスコ缶を買い込んでしまったりする
なんとも落ち着かない今日この頃ではあるけれど、
今年の春はひととき“動物の日向ぼっこ”の境地で、花見酒でも飲んでみたいものだ…。

hirune02

  1. 2012/03/16(金) 23:42:22|
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増大するエントロピー

kaitei01

夫が何よりも苦手とするもの、それは締切である。
これまでもこのブログで観察してきたように、原稿の締切にも日常的に苦しんでいるわけだが、
締切のなかでも最大の恐怖の対象になっているのが、毎年3月にやってくる確定申告の期限だ。

「今年もついに、3月14日を迎えてしまったね…」
「まず、必要書類を探し出すところから始めないとね…」
「でその書類は、いったいどこにあるのかしら?」
「たしか何かの袋に入れて、どこかに置いたような気がするんだよ」
「もしかしてその袋、いま研究室の本が未整理のまま積まれている、あの混沌とした書庫のどこかにあるのでは?」
「ああもう嫌だ。何もかもが嫌になってきた」
「…ということはつまり、書庫の整理をしないと、確定申告ができないということなのでは?」
「ああもう考えたくない。何も考えたくない。とりあえず気分転換をしないと」

というわけで、ほとんど捨て鉢な気分で近所の映画館に夫婦50割引で映画を見に行ってしまった私たち。
見たのは奇しくも『TIME/タイム』という作品で、“時は金なり”がテーマのディストピアSFだった…。

迫りくる確定申告。カオス化が進む書庫。爆発する花粉症。
この危機的な状況を、果たして我々は切り抜けられるのか?


  1. 2012/03/14(水) 23:27:12|
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3.11

311

昨年の3月11日、私はまだ会社員で、南青山のオフィスに毎日通っていた。
地震で地下鉄も私鉄も止まり、夫とは連絡が取れず、犬と猫が心配でたまらず、
とにかく一刻も早く家に帰ろうと決意して、会社の向かいのスーパーで自転車を購入した。

青山から吉祥寺まで、必死にペダルをこぎ続け、2時間近くかけて家にたどり着いた。
自転車なので上り坂が苦しく、東京はアップダウンが多い都市なのだと否応なく思い知らされた。
山手通りや井の頭通りを、一見して勤め人とわかる大勢の人たちが黙々と歩いているのは異様な光景だった。
いま思うと、『川の光2』の動物たちの行程を自転車で逆方向にたどったことになる。

『新潮』は最新号で、「震災はあなたの〈何〉を変えましたか? 震災後、はあなたは〈何〉を読みましたか?」
と銘打った大特集を組んでいて、夫もアンケートに答えて「電子冷凍機の悪夢」という文章を寄せている。
「電子冷凍機」とは、手塚治虫の『0マン』に出てくる、原子力ですべてを凍らせてしまう装置のことで、
富士山の噴火を止めるべくスイッチを入れられるが、誤作動で暴走し、地球に新たな氷河期を到来させてしまう。
5歳でこの漫画を読んだ夫は、窮極の「どうしようもなさ」「取り返しのつかなさ」のヴィジョンに深く脅えたらしい。

「わたしがここに書きつけておきたいのはただ、五十年以上の歳月を隔てて、まったく同型の戦慄が
よみがえってきたという鬱陶しい体験の報告に尽きる。浮世離れしたSF的空想のたぐいにすぎなかったはずの
幼児の悪夢が、半世紀後、いきなり現実化したことの驚愕を書き留めておきたいだけだ。
事故直後、暗澹たる思いでテレビを見、新聞を読みながら、この世には何でも起こるのだ、と私は思った。
その暗澹とした気分が、一年後の今、晴れたわけではない。」

私はといえば、震災とくに原発事故の後、以前からの「反=人間中心主義」の傾向がいっそう増幅されることになった。
常々、レヴィ=ストロースの「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」という言葉に共感し、
自分も人間の一員でありながら、人間とはどうしようもない過剰を抱えた何かであり、
存在するだけで地球とそこに暮らす生き物に害を与えているのではないか、と疑っていたのだが、それが確信に変わった。

それに反比例するように、以前にも増して動物が好きになり、動物たちを大切に思うようになり、
タミーとハナちゃんの姿を、できるだけ記録しておきたいと考えるようになった。
震災がなかったら、もしかしたらこのブログを始めることもなかったのかもしれない。

  1. 2012/03/11(日) 23:11:56|
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犬と猫の距離

このところ、夫が研究室に置いていた本を我が家の書庫に大量に運び込んでいて、収納に追われている。
書棚の整理をしていたら、大昔に読んだエドワード・ホールの『かくれた次元』という本が出てきて、
つい手を止めて、なつかしく読み返してしまった。

『かくれた次元』は、生物が他の個体との間に保っている“距離”について書かれた本である。
動物は種によって、人間は文化によって、この距離が微妙に異なり、
それが生活様式や、人間の場合は都市計画にまでに影響を与えている、と著者は主張する。

ホールによれば、動物は、くっつきあって生きる「接触性動物」と、
他との距離を必要とする「非接触性動物」に分かれる。
接触性動物はセイウチ、カバ、ブタ、コウモリなど。犬と猫は非接触性動物に分類される。

そこで私はハタと考えた。タミーとハナちゃんが同居することになってはや6年。
ハナちゃんが2年ほど先輩、タミーが新参者だったわけだが、この二者の距離は、この間どのように変化してきたのか。
ツーショットの写真を調べて、跡付け調査をしてみることにした。

①下の写真は、同居して3か月、タミーがまだ生後6か月のころ。
タミーは無邪気に近づいて挨拶したい気持ちでいっぱいだが、ハナちゃんのほうは、
それ以上近づいたら逃げる“逃走距離”が、約1メートル半くらいだったことがわかる。↓

kyori01

②同居1年ほどたつとハナちゃんも慣れて、一緒に日向ぼっこをするまでになった。
ただしまだ、30cm程度の距離は保たれている。↓

kyori02

③そして現在。
距離はさらに縮まって、至近距離で背中合わせにソファで熟睡している光景もしばしば目撃されるのだが、
たまにタミーが調子にのって、ハナちゃんを鼻でふんふんしようとすると、↓

kyori03

④それはさすがに許されず、鋭い猫パンチが飛ぶ。↓

kyori04

とりあえずの結論としては、ハナちゃんとタミーの距離はまだゼロになっていないようだ。
しかしYouTubeを探すと、抱き合って眠ったり、マッサージし合ったりする犬と猫の動画が山ほど出てくるので、
犬と猫の距離感(エドワード・ホールの用語でいえば「プロクセミックス Proxemics」)には、
同居時の個別的な状況、および個体差が大きく関わっていると思われる。

…なんてことを考えているうちにいつのまにか一日が終わってしまい、書庫の整理は一向に進まないのだった…。


  1. 2012/03/09(金) 23:23:43|
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春の犬映画②『ヒューゴの不思議な発明』

hugo01

『ヒューゴの不思議な発明』を“犬映画”に分類するのは少し無理がある…かもしれない。
しかしこの作品を語るとき、ドーベルマンのブラッキー↑の存在は無視できない。

ブラッキーは、1930年代のパリ・モンパルナス駅の鉄道公安官に飼われており、、
ご主人様に命じられるままに犯罪者を追跡し、駅の構内を縦横無尽に駆け回る。
監督のマーティン・スコセッシは、この犬を主要キャストの一員と考えていたはずだ。
その証拠に、大画面でクローズアップになり、長いマズルと立派な鼻が
3D効果で観客に向かって飛び出してくる大迫力のショットが、2回も挿入されている。
これまでありそうでなかった犬の3D映像である。

犬の撮り方からもわかるように、『ヒューゴ~』の真のテーマは“映画における特殊効果”だ。
物語は、父親を亡くして駅の時計塔で暮らす孤独な少年が巻き込まれるディケンズ的なファンタジーだが、
それは映画の草創期を最新技術で再現するための口実にすぎない。
だから正直、人間ドラマの部分はやや退屈ですらある。

以下、個人的に惹かれたポイントをアトランダムに列挙。
●自動機械が一度停止して、また動き出す場面
●湯気がたつ3Dクロワッサン
●鉄道公安官とブラッキーの入浴
●ジョルジュ・メリエスが駅の構内で経営する、
魅惑的なフィギュアやガジェットでいっぱいのおもちゃ屋(写真下参照)
●その店のカウンターで少年が修理するネズミのおもちゃ
(驚異的なスピードで走り回って最後に立ち上がる)
●メリエスのガラス張りの撮影スタジオと、
ザリガニ(?)の着ぐるみをまとった人々が行きかう撮影風景の再現

我ながら幼稚な感想で情けないが、この作品はあまり難しいことは考えず、
「わ~映画って本当に楽しいな、人間は昔から映像で驚かせたり驚いたりするのが好きだったんだな」
と素直に感心しながら“超豪華な飛び出す映画”として見ればいいのではないか。
犬好きの方は、ブラッキーの3Dクローズアップをお見逃しなく。

hugo03


  1. 2012/03/06(火) 22:05:50|
  2. 動物の映画
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100年前の渋谷

oooka01

渋谷の地形について考えているうちに、大岡昇平の『幼年』と『少年』という本を思い出した。
書庫から探し出して読み始めたところ、あまりにも面白くて、止まらなくなってしまった。

大岡昇平は明治42年(1909)に東京市牛込区に生まれ、大正3年(1915)に現在の渋谷駅南側、稲荷橋付近に引っ越して、
以後何度か転居しながら、昭和5年(1930)まで渋谷に住んでいた。
『幼年』と『少年』は、当時の渋谷とそこで過ごした日々を驚異的な記憶力で再現した“ある自伝の試み”である。

時代は今からほぼ100年前。第一次大戦後の好景気のなか、株式仲買人だった大岡少年の父親は相場を当てて裕福になり、
一家は渋谷駅周辺から宇田川町の借家に移り、さらに松濤の高台に居を構える。
少年が渋谷で過ごした15年の間に、渋谷は繁華街として大きく発展していく。

この2冊から見えてくる昔の渋谷は、こんな感じである。

●明治通りのあたりを流れていた渋谷川と、センター街のあたりを流れていた宇田川の水は澄み、メダカが生息していた。
あちこちに水車が回る田園風景が広がり、宇田川町の家に越してきたとき、大岡少年の母は「山家に来たようだ」と嘆いている。

●現在の代々木公園は陸軍の練兵場で、風の強い日には関東ロームの赤土が付近一帯の人家に降りかかり、
住民が廃止を請願していたが、満州事変が起きてうやむやになってしまった。
渋谷市役所のあたりは陸軍刑務所、いまTOHOシネマズがある場所には憲兵隊本部があった。
この時代、渋谷は“軍隊のお膝元の街”というイメージだったらしい。

●街路は雨の日に歩くのが困難なほどの泥濘で、いまより傾斜がきつかった道玄坂の下では、
馬車馬がへばっている光景がよく見られた。

●いま渋谷ヒカリエのタワーが建っている旧東急文化会館の場所は、大岡少年が最初に通った渋谷第一小学校、
東急本店がある場所は、二番目に通った大向小学校だった。

●このころから現在まで残っている渋谷の店は「甘栗太郎」と「大盛堂」の二軒のみ。
現在のマークシティのあたりに、尾上松之助主演作などがかかる「渋谷館」という映画館があり、
ブックファーストのビルの付近の空き地には、よく曲馬団が小屋掛けをしていた。

100年でこうも変わるものかと感慨深い。

来月の「渋谷ヒカリエ」オープンを皮切りに、渋谷駅周辺は今後10年以上にわたる大規模な再開発工事に入る。
東横線の渋谷駅は高層化するらしいから、東口の風景は一変してしまうだろう。
東京という都市では、“懐かしい風景”は、本当にあっという間に消滅してしまう。

oooka02
↑今朝、庭に出てみると、紅梅に続いて、白梅がひっそり開花していた。
「一輪ほどのあたたかさ」的な句を作れないものか…とその場に佇んでいたところ、
今年最初の花粉に襲われ、くしゃみの発作が止まらなくなって、風流な気分が台無しに…。

  1. 2012/03/04(日) 17:13:09|
  2. 川の光
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『川の光2』動物たちは渋谷を無事抜けられるか?

shibuya01

『川の光2』の動物たちはいま、渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で立ち往生している。
人と車があふれるこんな大繁華街を突っ切ることになろうとは、
武蔵野を出発した時点では、動物たちも読者も、まったく予想しなかったのではないだろうか。

足止めされていた世田谷区代沢の(と私が勝手に推測している)マンションを後にした
マクダフ、ビス丸、チッチ、タータは、スズメのリルの導きによって、
まず「下り坂になっている自動車通り」に出た。
世田谷方面から渋谷に向かう下り坂といえば、道玄坂である。

「この坂を下りきったところにある大きな交差点を渡り、上に高架線が走っているガードを潜り、
さらにもうひとつ広い自動車道路を渡れば、いちばん大変なところは抜けたことになる、
というのがリルの指示だった」(連載第176回)

つまり、道玄坂を下り、西口のスクランブル交差点を渡った後、ガードを潜って東口の広場に出て、
明治通りを越えて、青山方面に向かって宮益坂を上っていくわけだ。

shibuya02
↑スクランブル交差点。犬はともかく、小さなネズミの兄弟には、
ノルマンディー上陸作戦当日のオマハ・ビーチと同じくらい恐ろしい場所に思えるはず。

shibuya03
↑スクランブル交差点から東口方向を望む。
4月オープン予定の「ヒカリエ」がそびえ立つ。その左側が宮益坂。

渋谷は、中心部がすり鉢のように窪んだ“谷の街”である。
最近よく眺めている3Dメガネつきの『東京の凹凸地図』(技術評論社)で確認すると、
いまでは暗渠になっている渋谷川と宇田川の谷がスクランブル交差点のあたりで合流し、
松濤~代官山、代々木~原宿、青山の3つの台地をY字形に深く刻んでいる地形がよくわかる。

すり鉢の底にあたる地点まで、ようやくたどり着いた救援チーム。
だが、雑踏のなかで互いを見失い、上空でガイドしてくれるはずの鳥の姿も見えない。
これはひょっとして、最大の危機の到来なのでは? 
ここ数日の展開を、括目して見守るべし!





  1. 2012/03/02(金) 23:46:48|
  2. 川の光
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