川の光日記

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特別講演のお知らせ

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日頃このブログを見てくださっている方に緊急のお知らせ。

夫は2012年3月で東京大学を退職することになっているのだが、
年明けの1月16日に、退官記念の特別講演が開催される運びとなった。

日時:2012年1月16日(月) 17:00~18:30
会場:東京大学 本郷キャンパス 法文2号館2F 1番大教室

講演タイトル:
松浦寿輝 退官記念講演
「波打ち際に生きる―研究と創作のはざまで」

「ポール・ヴァレリーのような講演にしたい」と夫は意欲満々である。

予約不要、入場無料なので、ぜひお誘いあわせのうえご来場を!

詳細は下記のサイト参照:
東京大学文学部 現代文芸論研究室
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/genbun/120116matsuura.html

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タミーは残念ながら講演会場に入れないので、家から声援を送る予定。

そして、本年はブログを読んでいただいてありがとうございました。
皆様、よいお年をお迎えください!


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  1. 2011/12/30(金) 18:40:52|
  2. 日記
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2011年動物本ベスト5 その③ 『雪の練習生』

2011年の動物本ベスト5続き。

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母親が育児放棄したために、ベルリン動物園で人口哺育されて有名になったシロクマのクヌート↑には、
以前から注目していた。
動物の赤ちゃんはなんでも可愛いが、なかでも大型哺乳類の子供は、
あどけない顔やしぐさと手足のごつさのアンバランスさがたまらない。
クヌートはこのルックスで世界を悩殺し、グッズは飛ぶように売れるわ映画は作られるわで、
動物園に莫大な利益をもたらしたらしい。

多和田葉子の『雪の練習生』は、そんなクヌートの祖母と、母親と、クヌート自身の物語。
つまりシロクマの三代記である。



祖母は作家。その娘トスカはサーカスの花形。孫のクヌートは動物園のスター。
冷戦時代のモスクワ、東ベルリン、さらにドイツ統一後の西ベルリンへと、舞台は徐々に西へ移っていく。
シロクマの年代記にヨーロッパの戦後史が重なり、時代ごとに人称も文体も微妙に変化する。

第二部の「死の接吻」は、前半が人間の一人称、後半がクマの一人称で書かれていて、
クマと人間がキスをする芸は、東西に分断されたベルリンのアレゴリーのようにも読める。
第三部では、商業主義に翻弄されるクヌートの分身として、マイケル・ジャクソンらしき人物
(作中では“ミヒャエル”と呼ばれる)まで登場する。

しかし、圧巻はやはり、クヌートの祖母が一人称で語る第一部だと思う。
サーカスで膝を傷めて管理職に移った「わたし」は、海外公演の準備や会議の合間に、自伝を書き始める。
文芸誌に掲載されたのを機に「わたし」は作家として認められ、モスクワから西ベルリンに亡命する。

作家とはいえシロクマなので、「わたし」は冷蔵庫のスモークサーモンを一度に全部食べてしまうし、
爪がじゃまで本のページがめくれないし、ネオナチの少年を平手打ちで軽々と撃退する自分の暴力性におののく。
友好的な人間たちとのやりとりもどこかちぐはぐで、世界は不条理に満ちている。
亡命先のホテルで孤独にペンを握りしめるこのシロクマ作家は、ドイツを拠点に日本語とドイツ語で書いている
作者自身なのだ。だから次々と繰り出される荒唐無稽なイメージに不思議なほどのリアリティがある。

ちなみにリアル・クヌートは、大人のクマになってからは見物人が減り、今年3月19日に水槽で死んでいるのを発見された。
解剖で脳に問題があったことが判明した、と動物園は発表したという。


  1. 2011/12/27(火) 23:07:09|
  2. 動物の本
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タミーのひとりクリスマス

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タミーがクリスマスを満喫している。

ハナちゃんは唯物論者だし、夫と私は夢をなくしてしまった大人なので、
タミーは我が家でただひとり、まっすぐな心でサンタクロースを信じているのだ。

このキラキラした瞳で見つめられると「何らかの形で期待に応えなければ」と落ち着かない気持ちになってくる。
糖度が高い鹿児島県産の安納イモでスイートポテトを作ってプレゼントしようかしら。
あるいはコピス吉祥寺のキャラショップで『トイ・ストーリー3』のロッツォのぬいぐるみをゲットするのはどうだろう。

ロッツォはイチゴの香りのするピンクのクマ。
一見物腰が柔らかいのに、裏ではサニーサイド保育園のおもちゃたちを支配している邪悪な独裁者である。
なので、タミーにうがうが噛まれて涎まみれになってもあまり心が傷まない。

というか、本当は私が自分用に欲しいわけだが…
  1. 2011/12/25(日) 10:41:00|
  2. 日記
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走る犬、走る人

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冬の公園をタミーが全速力で走る。

私と夫は目を潤ませ、両の拳を固く握りしめて、そのしなやかなランニングを見守る。

私は慢性の貧血で、走るとすぐに心臓がバクバクする哀しい体質。
夫はといえば、ゆっくりゆっくり歩くのが得意技で、自らを一種の“緩歩動物”に分類しているほどだ。
(緩歩動物に分類されるのは、厳密にいえばクマムシだけなのだが)

5年前、読売新聞の夕刊で『川の光』の最初のシリーズが始まったとき、
朝刊では沢木耕太郎さんが連載小説を執筆されることになっていた。
連載開始にあたって、PRのために沢木さんと夫のポスターを撮影することなったのだが、
その撮影現場に沢木さんがなんと「走って現れた」のが、いまでも私たちの間では伝説として語り継がれている。

沢木さんは当時、現在の夫くらいの年齢でいらしたはずだが、
「あ、流星だ!」「いや、沢木さんだ!」と叫びたくなるような颯爽とした走りで到着し、
息も切らさず、すぐさま撮影に入ったのだという。

以下、夫の談。
──撮影は、東京郊外のある小学校の校舎を借りて行なわれたわけ。
ところが、集合時刻を15分過ぎても沢木さんが現われないから、みんなちょっと心配になりはじめたんだよ。
そして、こんな会話が交わされた。
記者A「沢木さん、遅いな」
記者B「今きっと、駅から走ってくるところだよ。沢木さん、いつも走ってるから」
僕「そう言えば、沢木さん、空港で走る話を書いてたよね。
なぜか自分はいつも空港で走らなければいけない成り行きになる、空港で走っている男を見かけたら、
それは私だと思ってほしい、っていう…」
記者A「あっ、校門の方からこっちに向かって走ってくる人がいるぞ」
(僕たちは2階の教室の窓から校庭を見下ろしていたんだ)
記者B「俺、近眼でよく見えないんだけど、その人、走ってる?」
僕・記者A「走ってるよ」
記者B「走ってるなら、それは、絶対、沢木さんだ」
爽やかな笑みを浮かべて現われたのは、もちろん沢木さんだった。

私は現場に居合わせたわけではないのだが、作品のほとんどを読破している沢木ファンとして、
その精悍な走りが目に浮かぶように思った。

「僕らも体を鍛えないとな…」
「ほんとうにね…」
「『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のトム・クルーズも、いい体してたよね」
「もうすぐ50歳なのに、ビルにはよじ登るし全力疾走はするし」
「サバイバルの決め手は決断力と体力だよね」
「ランニングはアルツハイマー予防にも効果があるらしいしね」

映画ならここで「よし、あの木まで競争だ!」とどちらかが叫んでふたりは走り出し、
息を切らした人間たちの周りをタミーが楽しげに跳ね回るわけだが、
そんなことには決してならないのが現実というもの。

私たちはボールを持ち帰ったタミーの頭をゆるゆると撫で、
背中を丸めてクマムシも顔負けの緩やかな歩みで駐車場へと向かったのであった。

走れタミー! 私たちのぶんまで!

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  1. 2011/12/22(木) 23:08:19|
  2. 日記
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2011年動物本ベスト5 その②『グーグーだって猫である』



2011年の動物本ベスト5続き。
今年ついに第6巻で完結した『グーグーだって猫である』は、やっぱり外せないと思う。

1995年、愛猫サバを15歳で亡くし、喪失感で茫然としていた大島弓子は、
吉祥寺のペットショップで一匹の子猫と出会い、グーグーと命名する。
やがて野良猫のビーが仲間入りし、2匹との穏やかな生活を謳歌していたある日、
作者は悪性腫瘍の宣告を受ける。
2巻で描かれるのは、手術を受けて抗がん治療を乗り越えるまでの闘病記。
3巻では、野良の子猫たちを見かねて世話をするうちに情が移って、猫がどんどん増えていく。
作者は猫のために24年住んだマンションから庭付きの一軒家に引っ越す。この時点で猫は9匹。
4巻以降はさらに猫が増える。5巻では保護施設からやってきた犬まで登場する。
ただしさすがに飼いきれなくなって、犬は新しい飼い主のもとに去っていくのだが。

6巻では、猫はなんと13匹になっている。そして2011年4月21日のグーグーの死で、
11年にわたって描かれてきたシリーズは幕を閉じる。

この作品で、大島弓子は作風が変わった。
グーグーは、『綿の国星』のチビ猫やサバのように擬人化されず、リアルな猫の姿で描かれる。
連載の第一回、第二回あたりではまだ細かった描線は、回を重ねるうちに太く、力強く変化していく。
最初はグーグーの一挙手一投足に感激していた作者は、癌を克服し、野良猫たちのゴッドマザーとなり、
いつのまにか少々のことには動じないタフな飼い主に成長している。

野良猫たちの暮らしは厳しい。猫たちは病気や事故であっさり死んでいく。
その一方で、作者の前には保護すべき小さな命が次々と現れる。病と死はもはや日々の生活の一部だ。
だからだろうか。突然訪れたグーグーの死は、意外なほどさりげなく報告される。
ただし最後の「グーグーの肉球に/指をあてると/にぎり返してきました」というネームは、涙なしには読めないのだが。

6巻を通して再読してみて、これは「猫をペットとして飼っていた人」が「猫の世界の人」になる物語なのだと思った。
おそらく、3巻か4巻のどこかの時点で、大島弓子は人間と動物の境界線を超えて、動物側で生きる人になったのだ。
猫好きがたどり着いた究極の境地というべきだろうか。

感動的な場面はいくつもあるが、私がいちばん好きなのは連載88回目の「川を渡り 野を走る」。
井の頭公園のホームレスに養われていた野良猫から大島家の家猫になったタマが、
作者と一緒に広い野原を散歩する場面だ。
タマが草原を全速力で走る姿を俯瞰でとらえたひとコマが、この連載では珍しいほど拡大されている。
次第に感傷が排されていく物語のなかに漂う一瞬の抒情。このひとコマは本当に泣ける。


  1. 2011/12/20(火) 23:55:07|
  2. 動物の本
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2011年動物本ベスト5 その① 『想像するちから』

今年も早いものでもう終わり。いろいろなジャンルで「2011年回顧」や「今年のベスト」が発表される季節だ。
そこで、このブログのテーマである「動物」に限定して、2011年の「超私的ベスト5」をシリーズで紹介していこうと思う。
今年は「動物本」の当たり年。動物というテーマを抜きにしても、
ベスト本として充分に通用する名著がめじろ押しだったような気がする。

シリーズその1で取り上げたいのは、『想像するちから チンパンジーが教えてくれた人間の心』(松沢哲郎/岩波書店)。
今年の毎日出版文化賞、科学ジャーナリスト賞を受賞している本なので、すでに読まれた方も多いのではないだろうか。



京大の霊長類研究所教授・所長である著者は、1978年から「アイ・プロジェクト」と呼ばれるチンパンジーの研究を始め、
1986年以降は毎年アフリカで野生チンパンジーの生態調査も行っている。
著者の興味は、人間に一番近い動物であるチンパンジーの心の研究を通して、
“人間とは何か”という哲学的な問いの答えを発見することにある。
…と説明してしまうと、なんだか堅苦しい内容のようだが、これほど初心者にも読みやすく、
かつ科学的な刺激を与えてくれる本も珍しい。
フィールドワークと研究所での観察から導き出された知見にはどれもハッとさせられるのだが、
特に印象的だったのは以下の指摘だ。

・チンパンジーは積木を積めるし、教えていないのに自発的に角を合わせる。
また、積木の塔が倒れるとご褒美がもらえるので、単純な学習理論から考えると早く倒したほうがいいのに、
なんとか高く積もうとする。いわば無償の行為である。
・利他的な行動もよく見られる。マンゴーの実は必ず二個取ってくる。一個は自分用、もう一個はプレゼント。
・研究所でのチンパンジーの行動と、人間の自閉症スペクトラムが示す症状(アスペルガー症候群など)は似ている。
ただし野生のチンパンジーには自閉症的に感じる行動はない。
・チンパンジーは人間よりはるかに優れた直観像記憶をもっている。人間はこの能力を手放す代わりに、
言語を手に入れたのではないか?
・チンパンジーは「今ここ」の世界に生きているから、寝たきりになっても絶望しない。
人間は「想像するちから」を持っているので絶望する。だが同時に、希望をもつこともできる。

この本で何よりも感動的なのは、どのページにもあふれるチンパンジーへの純粋な愛だ。
「チンパンジーは“サル”ではない、人間と同じヒト科に属している」と明言し、“一匹、二匹”ではなく“ひとり、ふたり”、
“オス、メス”でなく“男性、女性”と書くスタイルにも、それが表れている。
著者は絶滅危惧種であるチンパンジーの保護活動にも積極的に関与していて、
生息地を拡大するためにアフリカに植林する「緑の回廊プロジェクト」をこつこつと進めている。
この本の印税も、プロジェクトに全額寄付されるという。

蛇足だが、読んでいる途中で脳裡をよぎったのは、日頃タミーを観察して興味をひかれた行動の数々である。

たとえば、タミーは公園で流水をごくごく飲むのが好きなのだが、
どこの公園に行っても、どんな形態をしていても、水飲み場をすぐに見分けてしまう。
家で汲みたての水が飲みたいときは、蛇口がある風呂場の前まで行って扉を開ける身振りをする。
その身振りをすると、人間が水を取り替えてくれると知っているのだ。

「象徴的な言語だ…」と私と夫はそのたびに感心しているのだが、ただの犬バカ、というか犬奴隷だろうか…

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  1. 2011/12/17(土) 23:59:24|
  2. 動物の本
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『川の光2 タミーを救え!』100回記念

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12月13日、読売新聞に連載中の『川の光2 タミーを救え!』が100回目を迎えた。
そこで、100回達成記念として作者にインタビュー。読者のお便りやネットの反響を解析し、特に多かった疑問をぶつけてみた。

――タミーをあんなにひどい目に遭わせて、飼い主として平気なのかという声があるけど?
「そりゃあ心が痛まないこともないけど、物語上はちょっと可哀そうなことになってもらわないと、
タミー救出作戦が手に汗握るような緊迫感を帯びないでしょ。
それにまあ、現実には、元気いっぱいの実物と一緒に暮らしているわけだし。
このブログを見てもわかる通り、リアルタミーには何の苦労もないからさ」

――いろんな動物が登場するけど、メインキャラクターは誰なの?
「『川の光2』は言ってみれば群像劇です。連載は一回の文章がそれほど長くないので、メインキャラは次々に移り変わってゆく形になる。
読者の皆さんとしては、自分のご贔屓のキャラクターがしばらくの間出てこないのでいらいらしたりするかもしれないけど、
どの動物にもそれぞれに均等に出番があるので、そこは期待していてもらえれば」

――ビス丸の飼い主って、いったいどういう人?
「金満家とでも言いましょうか。犬をアクセサリー扱いする成金。堅気じゃない可能性? 鋭い指摘だねえ。
その可能性はあるかも。でも登場人物として今後クローズアップされる機会はたぶんないと思う」

――今日で100回目を迎えたわけだけど、これで全体の何分の一くらい?
「380〜400回くらいまで連載する予定だから、ようやく4分の1強まで来たわけだね」

――結末はもう決まっている?
「ある程度はね……。しかし、そこへ行くまで途中がなかなか見えなくて、原稿の進捗が遅れていて……。
最近はちょっと自転車操業状態で、担当の記者さんや挿絵の島津和子さんにご迷惑をおかけしています」

――とはいえ、今後の展開で決めていることはあるのでは?
「いまの段階で教えられるのは、東京タワーと東京スカイツリーが登場すること、
それから『特攻大作戦』のドナルド・サザーランド的な新キャラが救出作戦に加わるということ。それくらいかな」

…そうなのだ。実はこの小説、驚くほど先が見えていないのだ。
これからどう転ぶかわからない。まさしくジェットコースター小説である。
参考になるので、ご意見ご提案は大歓迎、だそうである。
ただし作者は“心にひとりの少年を棲まわせている”(←本人いわく)=天邪鬼な男なので、
どこまで素直に読者の声に応えるかは未知数なのだが…。

そんなわけで、今後も『川の光2』のご支援をよろしく!とタミーからもお願い。

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  1. 2011/12/13(火) 22:58:51|
  2. 川の光
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猫の肉球を占ってみた

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ハナちゃんが新聞を読んでいる。

事情を知らない人には、ただ新聞紙に乗ってぼんやりしているだけのように見えるかもしれないが、
このようにして浸透圧の作用で、ぐんぐん情報を吸収しているのである。

新聞二紙にざっと目を通すと、ハナちゃんはため息をつく。最近は暗いニュースばかりだ。
動き出してしまったTPP交渉。
ヨーロッパ経済の危機的状況。
被災地の猫たちの窮状。
猫カフェに猫を捨てていく人間たち。
ハナちゃんは思う。このままでは人類は滅びへの道を歩み始め、
自分たち猫も道連れにされてしまうのかもしれないと。

気分転換をしてもらおうと、図書館で『ねこの肉球うらない』という本を借りてきて、
「肉球見せて」と頼んだら、あっさり拒否されてしまった。

「私、占いは信じないの。唯物論者だから」
「まあそう言わずに。“ねこ風水”とか“ねこ姓名判断”も載ってるよ?」
「猫好きに消費させるための企画本でしょ? 典型的な資本主義の罠だわ…」

そう言い捨てると、ハナちゃんは大きなあくびをして近所の巡回に出かけてしまった。
が、私はめげずに、帰宅後に昼寝をしているときに、ハナちゃんの肉球を盗撮することに成功。

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鑑定した結果、以下のことが判明した。

ハナちゃんの肉球は「おにぎり型」。
性格的には、一見おとなしく見えるが、頑固で、気に入らないものは一切拒否する。
また、指球の頭脳球と食球がピンクだが、これは食に関する危機管理能力の高さを示している。
鮮度が低い食物は絶対に受け付けない、など。

当たっているではないか!

まあ、だからどうしたと言われると困るし、どんな猫にも当てはまるような気がするが。

その後、ハナちゃんがこっそり『ねこの肉球うらない』を読んでいる姿を目撃してしまったのは、
ここだけの秘密である…。


  1. 2011/12/11(日) 22:11:34|
  2. ハナちゃん
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冬の犬

今朝、東京では少しだけ雪が降った。積もるのではと期待して空を見上げていたが、
すぐ雨に変わり、やがて止んでしまった。

ううむ残念。このまま降り続けてくれれば、このときみたいにタミーと遊べたのに。
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雪の予感に興奮した寒い朝、アリステア・マクラウドの『冬の犬』という本を思い出した。

マクラウドは1936年生まれ。カナダのノヴァ・スコシア州ケープ・ブレトン島で育ち、
きこり、坑夫、漁師などで学資を稼いで博士号を取得、大学で教える傍らこつこつと小説を書いた。
この本には彼が31年間に書いた16の短編のうち8編が収録されている。

私が好きなのは表題作「冬の犬」。書き出しはこんな感じだ。

「これを書いている今は十二月、もうすぐクリスマスがやってくる。
オンタリオ州南西部のこのあたりでは三日前に初雪が訪れた」

雪が降って大喜びの子供たちは庭に出ていき、近所の犬と遊び始める。
それを眺めていた語り手は、ふと少年のころ飼っていた犬を思い出す。
力だけは強いが気が荒く役立たずと思われていたその金茶色の雑種犬は、ある猛吹雪の午後、
犬ぞりに乗っていた少年が氷が割れて湖に落ちたとき、戻ってきて彼をひっぱり上げ、命を救ってくれたのだ。
だがそんな犬を待ち受けていたのは、予期せぬ悲しい運命だった。
厳冬の自然を背景に、人と犬との残酷さをはらんだ物語が、感傷を排した精緻な文章で綴られていく。

とくに何度も読み返してしまうのは、書き出しの、犬と子供たちが遊ぶ場面だ。

雪の中、どこからともなく現れた「金色に輝くコリーに似た犬」は、最初はおとなしく子供たちを見ているが、
やがて「無言の招待に応じるように」その輪のなかに飛びこんでいく。
脱げた手袋を奪って嬉々として宙に放りあげ、子供たちの間をジグザグに走りまわる。

「全員の手をかいくぐって逃げおおせたあと、得意満面の選手のように肩越しに振り返り、
まるでエンドラインがあるかのように、もう一度手袋を宙に高く放りあげる」

おそらくゴールデンレトリバーと思われるこの犬は、
そうやって子供たちを翻弄してから、ひらりとフェンスを飛び越えて去っていく。

できれば全文をここに書き写したいくらいだ。
犬が無心に遊ぶ姿を、これほど生き生きと正確に描いた文章には出会ったことがない。

マクラウドの短編集はもう1冊『灰色の輝ける贈り物』という表題で刊行されていて、こちらも素晴らしい。
今週末はストーブの前に陣取って読み返してみようと思う。




  1. 2011/12/09(金) 13:39:33|
  2. 動物の本
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『タンタンの冒険』とスノーウィ

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公開中の映画『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』を見に行った。

夫と私は、映画の好みが似ているようで微妙に違う。
夫が好きなのは、トリッキーなサスペンスとテンポのいい活劇。
私は人間のダークサイドを容赦なく暴き、絶望的な気分にさせてくれる「黒い映画」に目がない。

そんなふたりの趣味をともに満足させてくれるのが、スティーヴン・スピルバーグという監督さんである。
夫は『インディ・ジョーンズ』シリーズの刺激と興奮を、
私は『A.I.』の倒錯を期待して、3Dメガネを握りしめて劇場へと急いだ。

そして2時間後…私たちは憔悴しきって、とぼとぼ家路をたどっていた。

「…なんだかひどく疲れたね」
「脳の奥がズキズキ痛む…」
「で、何が映っていたんだっけ?」
「いろんなものが映っていたね」
「模型の帆船とか本物の帆船とか」
「海戦に空中戦にカーチェイスとか」
「砂漠の遭難や港のクレーン対決もあったよ」
「ああ脳が…」
「昔はよかったなあ」
「メガネを二重にかけなくても映画が見られたし」
「画面で何が起きているか一目で把握できたし」
「とにかく早く帰って、このヘビーな疲労から立ち直らないと…」

帰宅した私たちは、そのまま倒れこむように床につき、深い眠りのなかに落ちていった。

というわけで私は、感想をきちんと書けるほど、この映画に盛り込まれた情報量のすべてを受け止められた自信がない。
せめて2D版をもう一度見ないとダメだと思う。
面白かったのか面白くなかったのかも、いまだによく判らないありさまである。

カラヴァッジョの絵画の登場人物が3Dで各々勝手に動きまわり、それを超高速の“神の視点”が
360度自由自在に捉えているような状態とでも言おうか。
あらゆる事物が表現でき、どんな場所にもキャメラが置けて、好みのスピードとアングルで移動撮影が可能。
そんな恐ろしい映画の時代がやってくるということだけはぼんやりと理解した。

ところでこの映画で、劣化が進む私の脳にもしっかり届いた唯一のキャラクターが、犬のスノーウィ。
白い短毛の犬(ワイアーヘアード・フォックステリア)で、人間ほど複雑なルックスではないうえ、セリフもない。
アクション面ではタンタンに負けず劣らず活躍するのだが、動きを追うのが比較的ラクなのである。

milou

↑原作ではこんな感じ。シンプルで生き生きした描線。

この犬の名前は英語圏と日本では「スノーウィ」だが、原作とフランス語圏では「ミルゥ」。
原作者エルジェのガールフレンドの愛称「マルゥ」からきているという。
好物はシングルモルトのウィスキー、嫌いなものはクモ。

現在、私はスノーウィのぬいぐるみ購入を真剣に検討中だが、結局はタミーに目をつけられて、
『トイ・ストーリー』的な世界観からすると玩具のなかで最も過酷な運命を課せられた
“犬のおもちゃ”になってしまいそうな予感がする。

なお『タンタンの冒険』は、夫によるちゃんとした評論が次号の『キネマ旬報』に掲載される予定なので、
ぜひ読んでいただければと思う。

  1. 2011/12/06(火) 19:47:09|
  2. 動物の映画
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スコットランド忠犬伝説

スコットランド話の続き。

エジンバラの観光スポットのひとつに「忠犬ボビーの銅像」がある。

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↑『川の光2』のマクダフに瓜二つ! 近くにはボビーの名前を冠したパブもあって繁盛している。

この銅像は、エジンバラ旧市街のグレイフライヤー墓地のすぐ脇にある。

モデルになったスカイテリアのボビーは、1858年に没した主人の墓に
1872年の自分の死まで14年間通い続けた“スコットランド版のハチ公”である。
絵本や映画の題材にもなり、「グレイフライヤー・ボビー」といえばイギリスではかなり有名らしい。

ところが今年の夏、カーディフ大学の先生が『グレイフライヤー・ボビーの真実』という本を出版した。

この本によると、ボビーは別の地区にある病院の周辺を餌場にする野良犬だったが、
捕獲されてグレイフライヤー墓地に捨てられ、けっこう居心地がいいので、ここで暮らし始めた。
やがて墓をうろつく姿が「主人の墓を守っている」と評判を呼び、見物客が集まるようになる。

スターとなったボビーは、墓地の管理人に餌付けされ、地域の振興に一役買うことに。
が、当然のことながら、野良犬あがりなので、飼い主の死を悼む心や忠誠心はゼロである。
さらに、初代のボビーが死んだ後、外見がよく似たスカイテリアが二代目として飼われていたことも判明する。
スカイテリアの寿命は10~12年で、14年も墓参りをするのはそもそも無理があるらしい。

こうしてボビー伝説は崩れ去ってしまったわけだが、どうやら当時の地元の人たちは、
真実を知っていながら、町おこしのために確信犯的に伝説を盛り上げていたようだ。

ひるがえって我が家のタミー。

よく言えば博愛主義、悪く言えば八方美人なこの犬は、
飼い主である私たちが突然、事故かなにかでこの世におさらばした場合、墓に通ってくれるであろうか。

↓この脳天気な「アハッ」顔を見ていると、ちょっと無理そうな気が…。

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  1. 2011/12/03(土) 22:46:40|
  2. 旅先の動物たち
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スコットランドへの旅の追憶

こんな曇天の寒い日には、なぜかスコットランドを思い出す。
私が死ぬまでにもう一度訪れたい場所ナンバーワンである。

とくに最北部のハイランド地方、グレンコー渓谷からスカイ島にかけての荒涼とした風景が忘れがたい。

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↑グレンコー渓谷。火星のような山なみが続く。

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↑スカイ島。最果ての気分満点。

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↑遠くにヘリブディーズ諸島を望む。

ハイランド地方では19世紀に「羊が人を食う」といわれた過酷な“囲い込み”が行われ、
牧羊地と貴族の狩猟場を確保するため、小作農が強制的に立ち退かされた。
そのため、いまでも人口密度が極端に低い。
羊や牛だけがのびのびと草を食んでいる。
村のなかを鹿が集団で駆け抜けて、旅行者をぎょっとさせたりもする。

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↑崖っぷち羊たち。

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↑こんな絶景のなかで暮らせる牛は幸せだ。

そして、スコットランドといえばネス湖。
言わずと知れたネッシー伝説発祥の地で、いまだに「グーグルアースに影が映っていた」などの目撃談が絶えない。

長さ約35キロに対し、幅は平均2キロしかない細長い湖で、透明度はほとんどなく、
海藻やプランクトンも少ないので、巨大な水棲獣を養うだけの魚がいない。
これはネッシーに対する決定的な反証のような気がするのだが、
精神年齢9歳、じゃなくて“心にひとりの不思議な少年を棲まわせた男”である夫は、
ネス湖に着いた瞬間から興奮が頂点に達して、遊覧船に乗っている間じゅう目をランランと輝かせ、
湖面を食い入るように見つめていた。

scotland03
↑遊覧船から眺める湖。たしかに、地形のせいか、不思議な波の立ち方である。
何かがヒョイと首をもたげたり、背中のこぶを突き出しているように見える瞬間がなくはない。

そういえば吉田健一も、目撃談が続々と報告され始めた1930年代から晩年にいたるまで、
ネス湖の怪物にずっと関心をもち続け、折にふれエッセイを書いていたのだった。

また旅行できるなら、今度はラス岬を回って、シェットランド諸島まで行ってみたい。


  1. 2011/12/01(木) 23:08:51|
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